孝(こう)と聞けば、堅苦しくなるけれども。儒教における、伝統的な徳目の一つよね。自身の親を敬うべしと説かれれば、道徳的ではあるが、どことなく反発したくなる人も多いのではないか。親の中には祖霊もあり、歴史的には家父長制と一体化してきたのね。
親孝行が高く評価され、これを実践する人を中国では「孝子(こうし)」と呼んだ。孝は、親の死後にも一定期間影響があり、『論語』には「父のやり方を3年間改めないのが孝行である」と記しているというのね。
日本では、明治維新後は教育勅語等により皇室、国家、親への崇敬が公的に浸透したのね。親への崇敬は社会的常識とされた。
「3年子無きは、去る(夫の方から離婚する)」ということばがあるが、これは祖霊に対する孝、すなわち子孫を残すことを孝とする観点から来るものなのね。子を残す女性が正しいとする考え方。しかし、中国で孝は、共産党時代が到来すると全面的に否定されたのね。
われわれ現代の親世代は、子どもに対して親孝行をまったく望んでいないかといえば、それはない。しかし、それは長年の親子の自然な情愛によるもの。その情愛があるからこそ、むしろ多くは子どもに負担はかけたくないと考えているのである。