
(つづき)無名性の文芸、川柳
『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』は、江戸時代中期から幕末(1765–1840)までほぼ毎年刊行されていた。単に「柳多留」とか「柳樽」と呼ばれることもある。167編が刊行されているのね。
創始者は柄井川柳(からいせんりゅう)と呉陵軒可有(ごりょうけんあるべし)。柄井川柳が前句附興行の万句合で選...【続きを読む】

無名性の文芸、川柳
1926年に柳宗悦(やなぎ・むねよし)らによって提唱された生活文化運動を民藝運動という。当時の工芸界は華美な装飾をほどこした観賞用の作品が主流だった。その中で柳宗悦らは名も無い職人の手から生みだされた日常の生活道具を「民藝」と名づけ、そこに美術品に劣らない美があると唱えた。美は生活の中にあると。土...【続きを読む】

しんぶん赤旗、「読者の文芸」川柳欄(4月22日(水)付、たむらあきこ選)
ニューファッション色柄あまた布マスク 長野県 翠 みち子
〈評〉もちろんコロナ禍に笑ってなどいられない。しかし、そういう状況だからこそ前を向かないといけない。その意味であえて軽い句を採らせていただいた。
距離をとる会話へ恋が進まない 広島県 北村 善昭
ウイルスが格差社会を炙り出す 埼玉県 ...【続きを読む】

これからの川柳に問われる、文芸としての厚み
俳句も川柳も、おなじ17音の短詩型文芸。季語や切れ字の有無だけでは、いまは区別がつかないといえるまで近くなってきている。風景を詠むと俳句、人間を詠むと川柳なのかといえば、人間(たとえば、笑い)を詠む俳句もあれば、風景を詠む川柳もあるという答えが返る。では、それぞれの文芸の本質とは何かということ...【続きを読む】

(川柳の)定型と破調
定型は五・七・五(十七音)だが、この一部(たとえば上五)に音数の変化(字余り・字足らず)があっても、全体のバランスが極端に崩れないかぎりは定型感がある。上五の音数が増えた場合も、中七・下五が整っているときには定型句としての格調は失われないように思える。
禅問答つづいて鬼灯(ほおずき)になった
他人...【続きを読む】