ー私小説(昭和20年~29年)ー
わが頭わが手で愛すほかになし
生きて行く技巧まずしく歯を磨く
春雷や 人あざむいた覚えなし
こんな美しい貧乏をさげすむか
言い訳の呼び鈴おせば灯がともる
家を売る日のひとときを父の墓
慰めて下さる人もふしあわせ
金借りに行く靴なれど磨く妻
ぎりぎりの憎しみ石を投げてみる
おとぎの国にばくだんはないよ
連れて来た家のおもちゃがみな動き
ぼうふらの眼にぼうふらが死んで行く
幸せは屋根に瓦がのっている
敗北のうたの作詞者なら許す
しばらくの別れどちらも寒くなし
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