表題の句は、昨年の大阪川柳大会で、たむらあきこ選「衣」の秀句に採らせていただいた前田咲二先生の句。この句を、私が選者ということで、当日夜中の2時までかかって作句されたと伺った。大会当日、句会場で気分を悪くされ、倒れられたのも、お疲れの影響があるかも知れない。
師弟関係は厳しいもので、私のほうからも、先生の納得のできない句は落とさせていただく。先生も勿論おなじである。そういうことを笑いながら喋り合えることを、ほんとうに有り難く思っている。
この句は、私にとっては大切な思い出の句として、また先生の代表作として残ることだろう。よく句意を訊かれるので、もう1度下に記させていただく。
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ひらがなの衣裳で昂(たかぶ)りをつつむ 前田 咲二
【評】「ひらがなの衣裳」とは何か。「衣裳」が衣装ではないことに着目。優美な「衣裳」、紗(しゃ)など、うすものの着物なのではないかと推測。そういう着物をさらりと着て、立って(あるいは座って)いる。何による「昂り」なのかといえば、(男との)逢瀬ということにほかならない。一見女の句かとも思うが、作者は男。目の前の艶かしい女の姿態を眺めて、愉しんでいる。(よい意味で)色好みの男の句。
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このような句は、大会でそうそう出る句ではなく、川柳家として、後世まで句の価値を問えるレベルの作品。おなじ作者に次の句がある。どちらも大会の秀句。どちらも並みの
感性では詠めない。
淋しい顔の女淋しい耳をもつ
真ん中で切るとふたつの風が吹く
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渡辺柳山_こころの調べ_ISBN978-4-8237-1444-3.webp)


