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9月27日(水) 和歌の浦片男波吟行句会(和歌山市市民大学開講3周年記念)
(招待選者からのひとこと&嘱目吟)

 風景の原義は風光とか。景そのものではなく、風と光の織りなすものという意味があるらしい。風景も、それを鑑賞するにはある程度の知識を得ていることがたいせつ。鑑賞は芸術作品に対するのとおなじ、一人一人の主観性をもつといえるだろう。
 風景ということばは、景観ということばに比べるとやわらかい。自然や人工物の一部を風景ととらえ美的感性によって観察、そこから短歌や俳句など文芸もうまれた。〈にんげん〉を詠む文芸である川柳も、そこに加えられてよい。なぜなら風景とは自然と人間とのあいだにつくられる関係であり、そこに固有の意味を与えて表現者の思想をあらわすものなのだから。すぐれた風景があり、そのもとで芸術作品の結晶が認められるような場所が、著名な景観地として文化的存在になっているのだ。
 歩けば歩くほどに見えてくるものがあると思う。なんどもおなじその地に立ってこそ、先人の想いにも近づけるように思う。資料を読むことで少々知識を深めてから出発。その地で自ずからことばがほとばしりでる。それを十七音に定着させてゆく、それが吟行。(たむらあきこ)

五十鈴川吟行17句(2023/6/26)
何の木の花とは知らず 知らぬまま
伊勢滞留の西行芭蕉ゆかりの地
歌碑へ句碑へ西行芭蕉なぞる旅
伊勢参りわたしの伊勢はいつか雨
ふりむけば雨脚句碑をつつみこむ

本地垂迹(ほんちすいじゃく)きのうに入る二見浦
波を聴くほどに大日如来顕(た)
日かげ洩る陰をひろってゆく参道
つぎのご遷宮まで生きていられるか
神殿にぬかづく西行付鬘(つけかづら)

遥拝の吐息を知っている橋だ(※風日祈宮橋)
川面向くわたしのうしろきみがいる
川面へとやがてつぶやきだした雨
やがてざわざわと川面に雨の声
唯一神道(ゆいいつしんとう)きのうの鈴の音(ね)のさやか

もうずっと逢わぬ逢えぬと雨の中
重い気分をあなたの声が繰りかえす


プロフィール
たむら あきこ
和歌山市在住。1999年から川柳をはじめる。
川柳の“東の横綱”前田咲二に師事。川柳瓦版の会編集同人を経て、フリー。しんぶん赤旗「読者の文芸」川柳欄選者。全国各地を吟行中。
22年度、23年度、25年度、26年度咲くやこの花賞各優勝(永久選者)。
第33回国民文化祭・おおいた2018 「湯けむりたなびく温泉地別府 川柳の祭典」にて《一本のペンからにんげんが香る》で文部科学大臣賞。
第36回国民文化祭・わかやま2021 ~黒潮薫るみかんの里 有田市 川柳の祭典~ にて《木簡も書簡もにんげんの橋だ》で和歌山県知事賞。
第37回美ら島おきなわ文化祭2022「川柳の祭典」にて《戦跡の石ころにんげんに触れる》で全日本川柳協会理事長賞、《立ちくらむ独りに水音がしみる》で特選の止め。
『令和川柳選書 よけいにさみしくなる』で第16回川柳文学賞準賞。
第10回、第11回、第18回川柳マガジン文学賞各準賞。川柳マガジンクラブ誌上句会第7期優勝。
第28年度夜市川柳賞優勝。蟹の目大賞、光太夫賞ほか受賞多数。
著書に『たむらあきこ川柳集2010年』、『たむらあきこ千句』、『川柳作家ベストコレクション たむらあきこ』、『たむらあきこ吟行千句』、『令和川柳選書 よけいにさみしくなる』ほか『前田咲二の川柳と独白』(監修)。

住所:640-8007 和歌山市元寺町西ノ丁7-405
電話Fax:3-432-7326
パソコン・スマホから『たむらあきこ川柳ブログ』(新葉館出版)が見られます。「たむらあきこ 川柳」で検索。



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