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2月いっぱいで抄出を終えるため、急いでいます。《二紙を読む右も左も知りたくて》という先生の句があります。「(右とか左とかいうより)おれは、まず日本人や」とおっしゃったことがある。周囲のだれに対してもおなじ目線で、おごったり見下げたりすることのなかった先生を〈咲爺(さくじい)〉と呼ぶ古くからの柳友もいて、春風のような人柄がみなさんに親しまれ愛されておられました。(※川柳でいう〈人形〉とは、人間そのものを指すことが多い)

前田咲二遺句集 平成9年』【33】
エルトン・ジョン国民葬を歌い上げ
左遷地の職場の花がやさしすぎ
遠ざかる記憶 紀伊國屋で探す
大正の素顔 鏡の中にある
家系図に姫と呼ばれた人がいる
勝負したいと思う相手が見当たらぬ
速達で愛を送っていいですか
生きながらえて支点が少しずつずれる
二幕目は妻を主役にするつもり
垂れ幕があると覗いてみたくなる

遊ばれているとわかっていて遊ぶ
医者がなんと言うたか妻が話さない
ふるさとの神話に道しるべの烏
一日のドラマへ窓を開け放つ
軽い遊びに軽い眩暈がつきまとう
張った張ったとわたくしを叩き売る
惚れたのも嫌いになったのもわたし
ぼくの噂を聞いてしまったぼくの耳
本当の道はコースの外にある
朝日 毎日 産経さげてゆくトイレ

仲裁へ場数を踏んだ味をみせ
孫できて少し元気が湧いてくる
ぼくが帆を上げると風が吹いてくる
古人形二つが凭れ合って生き
楢山節考 老いてふたたび読み返す
頭より舌の回りのいいあなた
鈴虫を食う鈴虫を見てしまう
刑事さんですかとぼくの目をのぞく
ニッポンの豊かな秋へ里帰り
核の傘の中ぬるま湯の自衛論

捕鯨禁止の町にくじらの飾り山車
闘いを捨てた男に風は秋
口移しにあなたへ伝えたいことば
もう演技しなくてもいいデスマスク
手拍子が合うて支配が強くなる
母さんが切り抜いていてくれた記事
ぶらんこの高さ青春だと思う
熱燗へ肩の力が抜けてゆく
黄を見ると駆け出す癖が治らない
いい奴がなぜ先に逝く天の川

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※2月いっぱいで抄出を終えるため、急いでいます。先生のたましいは、真っすぐ春風のような詩人のたましいでした。響き合ったのは、その部分。ご自分同様に俳句から短歌(わたしは短歌から俳句)、さいごに川柳に辿... 「川柳の横綱・前田咲二遺句集(平成9年)【29】‥《激情のぼくを仏と人は呼ぶ》」の続きを読む
※2月いっぱいで抄出を終えるため、急いでいます。一昨年の9月4日、先生からの最後の電話を忘れることができません(9月27日に亡くなられたのね)。「瀞峡へ行くんか。ええとこへ行くんやな。おれも行きたい」... 「川柳の横綱・前田咲二遺句集(平成9年)【28】‥《たったひとりの岬に海が広すぎる》」の続きを読む
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