Loading...Loading...

一草庵2

 写真は種田山頭火の終の住処となった一草庵(当時)。道後温泉にほど近い松山市の城北、閑静な寺町の一隅にある。御幸寺が納屋として使っていた境内の建物を住居として改造したもの。昭和14年12月15日、山頭火はここに入った。一草庵で、絶食と飲酒を繰り返しつつも自らを見つめ続け、珠玉の句を吐き続けた。昭和15年10月11日未明、脳溢血のため永眠。享年59歳。
 この地に立つと、山頭火が話しかけてきた。一代句集『草木塔』をひらくと句が語りかけてきた。山頭火と渾然一体となったこころが吐き出したのが下の句群(ところどころの歴史的仮名遣い、これは自ずからそのようになったもの)

一草庵 (種田山頭火終焉の地) 吟行34句 (2017/2/17)
出家得度捨てきれぬまま捨てている
鐘ついて堂守 なお捨てきれず
きのふもけふも一人の酒を注いでいる
捨てて捨てて捨てゆく拾うものありや
しづかといへばしづかに穴があいている
南無観世音 息とめている雨の音
母の霊前にうしろを積みあげる
分け入ればきのうの水を騒がせる
行乞流転 ひとり芝居かもしれず
 行乞流転 風になりゆく
草履ぬぐ ふり向くもの無きにしもあらず
酒注いでうつろに入る 春嵐
さまようて半透明になりかかる
鴉啼く どのみち悔いはあるだろう
あなたこなたの水をおもってたそがれる
別れかもしれぬ いくばく弱くなる
金網の向こうきのうの声に凭る
結庵の地に小雨あり 如月
ひよいと四国へわたくしのひとり
四国遍路へ衣鉢すてさる山頭火
海路松山へと死に場所をさがす
 けふの寝床をさがす 死に場所
着物の尻からげるわたくしのひとり
母の位牌背にたどり着く一草庵
さんや袋吊るし世俗を切っている
ほどよい死に場所はここかとぬぐ地下足袋
 分に過ぎると庵へ感泣
御幸山麓 終の住処をいただきぬ
 みずからを裂く 日記つまらぬ
 きのうの声がさがすきのうを
 自らを咬む酒をまた注ぐ
 欠落感か答え刃向かう
享年五十九 ひそかに風が死んでいる
寺町の一隅積みあがる時間



この投稿を読んで「いいね」「参考になった」と思ったらクリックをお願いします。
なお、Facebook、Twitterなどのアカウントをお持ちの方はそちらをクリック頂き、また、「ひざポン」ボタンもクリックください(ひざポンは無記名ボタンですのでお気軽にクリックください)。

コメントはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Post Navigation

Copyright All rights reserved. SHINYOKAN PUBLISHING illustration by Nakaoka.K