「親子」という関係もいろいろとむずかしい。ことさら「血のつながり」が強調されることもあるが、これは人間社会だけのことであって、生物学上必ずしも一般的・普遍的というわけではないとか。
人間の母と子の関係も、必ずしも子は産みの母に愛着を示すわけではないという。最近では人工授精なども広く行われるようになり、以前は存在しなかったような「親子関係」も出現してきているのね。
日本では、古くは大抵、親が老いると子やその配偶者が介護をするような関係にあった。近年は子に介護される代わりに自分の意思で老人介護施設に入ったり、子が親を介護施設に預ける割合も増えているのね。平均寿命が延びた一方で出生率がかなり低下した状態が続いていて、超高齢化社会となりつつある。結果、現代日本では「老老介護」の割合も高くなってきているのね。
親子関係は、親が老いたからというわけではなくても、さまざまな問題を孕んでいる。これからは「とりあえず親子の縁があっただけ」とあっさり考えることはできないものだろうか。何もかも完璧にととのえなければいけないということはない。親子関係も「こうあるべき」という思い込み・枷(かせ)が人を苦しめるのね。親子であるということを「つきつめない」ことがこの先必要なのではないだろうか。