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前田咲二遺句集 平成13年』【24】
楽々と夕陽の泥にもぐり込む
昭和史にわたしの遺伝子を残す
妻という杖が身近にいてくれる
満ち足りて写経の音の中にいる
わたくしが隠れる袋 持ち歩く
おいしいものは音たてて食えばいい
魁夷のブルーに溶けてしまったぼくの駄馬
いろいろあって落ちた果実は拾わない
寂聴法話ふわり男のことに触れ
父を奪った水平線がおだやかに

敵影を見た 水平線は暗かった
ずっしり重い魔女からのお中元
トラ異変 水銀柱を押し上げる
酔いざましに犬と吠えっこしています
灯を消して夫の言い訳を捌く
美しい思案を月としています
焼鳥の串をごまかす素浪人
ずばり言わしてもらう女に甘すぎる
別れなはれが口癖の占い師
路地を辿る荷風の影に会いたくて

街道で聞く 司馬先生のご健脚
西成の焚火にぼくの場所がある
おじさまを手玉にとっているゲーム
手裏剣が赤絨毯に落ちている
いつもの小言へいつもと同じ口答え
親米も反米もいる基地の町
男も変わった育児書を読んでいる
靖国参拝ぼくの意見も聞いてくれ
叩かれてトーンを下げる真紀子節
四島のあたりにもやもやが溜まる



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