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原爆 時計原爆ドーム6 大会の行き帰りなどに電車が広島駅を通過したことは何度かある。その度にいつかこの駅に降り立つこともあるのだろうかと考えながら、実のところいささか心が暗くなるのが常だった。この地で一瞬にして何万人もの人々が、まるで消し去られるように亡くなられたとの印象が、軽い気持ちでこの駅に降り立たせなかった。オバマ大統領が5月27日に広島を訪問。私が選を担当している川柳マガジン「読者柳壇」の課題「殺到」に、たまたま《地鳴りとなって来るヒロシマの御霊》(坂本 加代)を特選に採らせていただいたことで、今回(20日~22日)の ヒロシマ吟行を決めた。

峠三吉『原爆詩集』より

八月六日

あの閃光が忘れえようか
瞬時に街頭の三万は消え
押しつぶされた暗闇の底で
五万の悲鳴は絶え

渦巻くきいろい煙がうすれると
ビルディングは裂け、橋は崩れ
満員電車はそのまま焦げ
涯しない瓦礫と燃えさしの堆積であった広島
やがてボロ切れのような皮膚を垂れた
両手を胸に
くずれた脳漿を踏み
焼け焦げた布を腰にまとって
泣きながら群れ歩いた裸体の行列

石地蔵のように散乱した練兵場の屍体
つながれた筏へ這いより折り重なった河岸の群れも
灼けつく日ざしの下でしだいに屍体とかわり
夕空をつく火光の中に
下敷きのまま生きていた母や弟や町のあたりも
焼けうつり

兵器廠の糞尿のうえに
のがれ横たわった女学生らの
太鼓腹の、片目つぶれの、半身あかむけの、
誰がたれとも分からぬ一群の上に朝日がさせば
すでに動くものもなく
異臭のよどんだなかで
金ダライにとぶ蝿の羽音だけ

三十万の全市をしめた
あの静寂が忘れえようか
そのしずけさの中で
帰らなかった妻や子のしろい眼窩が
俺たちの心魂をたち割って
込めたねがいを
忘れえようか!

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