川柳が短歌や俳句の下につくものとされてはならない。そのためにも、句に品格がなければならない。軽佻浮薄に流れて、この先、万が一にも狂句に戻ってしまうようなことがあってはならない。明治37年来の阪井久良伎や井上剣花坊を始めとした先人の努力が水の泡になる。
「咲くやこの花賞」に残る名句を たむらあきこの眼で抄出。まず2句。
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諦めたとき美しくなるこの世 新家 完司
板野美子選「美しい」の〈地〉(?)に採られた句。編集会で拝見、感動。ご自宅に電話を入れさせていただいたほどだった。そんなことは初めて。たまたまお留守で、どなたも出られなかったことを覚えている。芥川龍之介の「或旧友へ送る手記」の中の「末期の眼(まつごのめ)」を思い起こさせる。死を意識した眼でこの世を見ると、愛おしくより美しく見えるというのが句意。
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天国より地獄の花が美しい 前田 咲二
一休禅師(いっきゅう・ぜんじ)に「仏界入り易く、魔界入り難し」ということばがある。川端康成が掛け軸にしてこのことばを身近に掲げていたことが知られている。芸術論として究極の真理。川柳という文芸を含め、創造に関わる人間は魔界に住んでいる。泥の中、カオスに開く「花」。異形(いぎょう)の鬼神こそが芸術の神なのかもしれない。「地獄の花」になぞらえるのは、まず曼珠沙華。
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