*平成13年度に入ります。
『前田咲二遺句集 平成13年』【20】
入れ歯洗滌 飾るものなどない暮らし
省庁再編はんこ屋の高笑い
ITという蛇に締めつけられている
一月四日生ゴミ提げて家を出る
納骨はさくらの頃にする 都合
化けてゆく一部始終を見る車内
紀伊國屋でときどき夢を補給する
女の夢にもううなされることはない
七十歳の首でよければ賭けましょう
退くに退けぬ男の賭けがあるのです
湯豆腐の角にも意地があるのです
父は明治わたしは大正を守る
短剣を吊った自分に惚れている
太陽に恥じることなどない十指
底のない財布を妻が持っている
万札を持つとうろうろしたくなる
寝たきりのいのちを介護するいのち
ときどきは酒でいのちの丸洗い
行きすぎたと思うこれからだと思う
生ゴミの袋に透けている 答
オイと呼ぶあたりに妻が居てくれる
源氏対談 寂聴 聖子 鬼二人
切手貼るのにそないに舌を出さんかて
前略と書いて想いがほとばしる
ネクタイを締めると男 小さくなる
進水式の砂にまみれた餅拾う
参ったと言うまで絡みついてやる
その柄とおんなじ柄を持っている
焼き鳥の匂いが誘うから曲る
何人の男を剪った 花鋏
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