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 植物や昆虫など生きものに興味をもっていた昭和天皇(1901-1989)は、とくにイソギンチャクの仲間であるヒドロ虫類の研究に力を注ぎ、多くの著書も残されたのね。

 側近の記録に残るつぎのエピソードはいかにも生物学者らしい。侍従長をつとめた入江相政(いりえ すけまさ、1905-1985)の「宮中侍従物語」につぎのようなことが書かれているというのね。65年9月、天皇皇后が那須で静養中に侍従らが皇居・吹上御所周辺の草を雑草として刈ったと聞き、天皇が「雑草ということはない」と言われたのだと。「どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方で、これを雑草と決め付けてしまうのはいけない」と。

 このことを知ってから、庭の草を抜くときになんとなく後ろめたさを感じてしまうのね。そのような意識を向けて見ると、見え方が変わる。身近な草がなんだか愛おしくなったのね。とくに雨の後の草のみずみずしく美しいこと。また外出先で出合う草たちは生命力が半端ではない。かれらも懸命に生きているのだ。

 万葉の時代から日本人に愛され、詠われてきた草もある。それらのなかには生薬として利用されたり、ふつうに料理して食べることのできるものもある。そう考えると、まったく道端に生えている草に誰がいつから“雑”などと付けたのだろうと思うのね。ものごとのとらえかたが人によって異なるように、おなじ草でもやっかいなものであったりそうでなかったりするわけである。

 誰のことばだったか、「名を知るは愛のはじめなり」という名言があるのね。自然観察はまず動物や植物の名前を覚えることから。そこから自然を愛するこころが育つのね。俳句は自然諷詠だが、原点はやはりここよね。にんげんを詠む川柳においても、”愛”は相手の名を知り、「きみ」「あなた」と呼びかけることにはじまる。ちなみに「人知るもよし、人知らぬもよし、我は咲くなり 」と、これは武者小路実篤(むしゃのこうじ さねあつ、1885-1976)のことば。

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