手のなかに師・前田咲二❾‥《騙し絵の中にかくれているわたし》(前田 咲二)
『前田咲二遺句集 平成11年』
貸金庫に遺言状を入れてある
酒が出て軽い話になってくる
香奠と思って払ろてくれないか
年の離れた女と春の歩を合わす
お産休暇くれと男が言えますか
こんなわたしを好きとはけったいな女
耳に穴あけて男が弱くなる
猫も男も恋に嵌って戻らない
別れ際のことばが胸にひっかかり
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手のなかに師・前田咲二❽‥《死に顔を見にライバルはきっと来る》(前田 咲二)
『前田咲二遺句集 平成11年』❽
年齢もウソ 独身も嘘みたい
ぼくの生年月日にぼくが惚れている
嫁の手へ渡すややこのお年玉
じゃんぼ籤も罰もあたらず年が明け
男ひとりの暮らしにもどる七日粥
内需拡大しすぎた正月の財布
餅箱へ転がす餅が生きている
優しく叩いてワインの樽を眠らせる
一人よし二人またよし...【続きを読む】
お待たせいたしました‥本日から「前田咲二遺句集 平成11年」の選句を開始
選句の途中で気付いたのは、先生は没句を捨てていないということ。入選するまでなんども同じ句を出しておられる。なんどか没になった句の中に、非常に優れていると思われる句もある。句は、選者を選ぶということだろう。
毎日起床後、まずパソコンを立ちあげ、眼が元気なうちに選句に入る。すべて終えるにはどのくらい...【続きを読む】
川柳塔わかやま吟社10月句会(2018)‥《弁当の途中でひろう着信音》
「前田咲二遺作集 平成10年」分の抄出は、昨夜で終了いたしました。本日川柳塔わかやま吟社でひと月ぶりの柳友たちと楽しんでまいります。
平成10年度の先生の句会出席数は112回。お預かりした自筆の稿に遺されている句は、没句も含め千数百句。抄出したのは、210句。
誌上大会出句分などはお預かり...【続きを読む】
手のなかに師・前田咲二❼‥《気心を許し外濠埋められる》(前田 咲二)
『前田咲二遺句集 平成10年』❼
伸び切った輪ゴムの中に妻と居る
夫婦別姓 首輪が少し軽くなる
スランプの形で髭が伸びている
マツタケにもカニにもぼくは不感症
うどんのネギ多いと幸せと思う
外野席の主張を一つずつ拾う
鹿の脱糞 ぽとりと冬が静止する
鹿の瞳に静かな刻が流れている
名人の芸のかけらも見...【続きを読む】
手のなかに師・前田咲二❻‥《環状線の秋を一駅ずつ拾う》(前田 咲二)
『前田咲二遺句集 平成10年』
神様がいいと言うまでただ歩く
歩き疲れて仏の膝をお借りする
使い捨てカメラで軽い恋を撮る
肩書きを捨てて自分が見えてくる
新聞をがつがつ食べている戦士
ポケットでショックを握りしめている
残り時間を刻むわたしの万歩計
秋を逢う訣れことばをてのひらに
男ひとり皿を汚さぬ...【続きを読む】
手のなかに師・前田咲二❺‥《池に鹿 魁夷の森に迷い込む》(前田 咲二)
画:東山魁夷 (描かれたのは、御射鹿池)
『前田咲二遺句集 平成10年』❺
本当の自分を探すまで流れる
利休茶碗を抱くやんわりとしっかりと
やんわりと妻が握っている尻尾
涙に弱い男とすぐに見抜かれる
教会で会った男と寺で会う
母を描けば弥勒菩薩になるだろう
同期の桜歌うといつも泣く男
爽やかな退き際...【続きを読む】
手のなかに師・前田咲二➍‥《小島功のカッパが酒をつぎにくる》(前田 咲二)
『前田咲二遺句集 平成10年』➍
心冴える刻をしずかに待つ匠
焼き芋を包むやっぱり新聞紙
疾しいところがなければああは騒ぐまい
ひもじくて田辺聖子を食べている
胃カメラに見られるぼくの不行状
わがままなわたしがしゃしゃり出て困る
馴れそめも別れも傘は知っている
ニンニクの臭いチャンスをふいにする
古...【続きを読む】
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