川柳マガジン2023年4月号掲載[前衛川柳]
特選
起こさないように柩の釘を打つ 菊地 良雄(神奈川)
秀作
もう少しこの世の花を見るとする 齊藤 大柳(千葉)
折り鶴の凍る夜です独りです 米山明日歌(静岡)
生きてきた証はいらぬ名もいらぬ 大畑 曇天(静岡)
気になる一句
鬼ばかり増えて地球が青くなる 佐瀬 貴子(茨城)
佳作
1アバターに下見をさせる黄泉の国 田口もとい(群馬)
2方舟の予約ポイント溜めている 宮内多美子(愛知)
3曇天にアリストテレスソクラテス 句ノ一(静岡)
4戦闘員のコピーを作る試験管 池田みほ子(奈良)
5AIがいつか閻魔の代りする 北野 哲男(兵庫)
6アバターで外出みんな繭の中 玉井 浩子(愛知)
7アンコールしてはならない核兵器 松田 順久(三重)
8天国でも戦争するだろうヒト科 富岡 桂子(神奈川)
9神様に試されている核ボタン 林 國夫(石川)
10結界がありそう水たまり覗く 瀬田 明子(千葉)
11QRコードに閉じ込められた僕 高杉 力(大阪)
12モンスター産まぬランプの磨き方 小川 佳恵(大阪)
13てのひらを開くと見えてくる明日 渡辺 遊石(静岡)
14萎んだり膨れたりして春が来る 牧野 芳光(鳥取)
15くちびるは火山あなたに逢いにゆく 田中 良積(北海道)
16まだ二千百万秒もある余命 岩本 英樹(兵庫)
17前頭葉欠けてわたしが欠けてゆく 米本 素光(東京)
18オーダーは三途の川を渡る虹 北島 澪(埼玉)
19消しゴムのカスに詰まっている未練 日野 裕子(千葉)
20自画自賛それが私の生きる道 福勢 博子(埼玉)
21ギザギザのハート晒して生きてやる 勢藤 潤(群馬)
22桃太郎怯える鬼の倍返し 太秦 三猿(北海道)
23種蒔きはスマホスケジュールの中へ 竹内いそこ(富山)
24あの罪もこの罪も消す雪化粧 西尾芙紗子(京都)
25生きるとは跳ねる魚の踊り食い 熊坂よし江(福島)
26ピーマンを切ると戦車が走り出す 小室ひろし(神奈川)
27七彩のハートをプリズムに曝す 菱木 誠(奈良)
28右利きの赤鉛筆は右の耳 植竹 団扇(東京)
29黒豹が前をよぎった深夜便 こはりつよし(奈良)
30爺ちゃんも婆ちゃんも中性化する 寺井 一也(石川)
31耳に棲む虫と話す夜のしんしん 有海 静枝(山口)
32AIとコロナ連合軍が来る 山本吐思尾(岡山)
33やがては宇宙をAIが牛耳る 村上 和子(広島)
34夕暮れて挫折が椅子に揺れている 植松 蓮華(静岡)
35見上げてる人の数だけ月がある 宮川 令次(東京)
36カルメ焼きボロボロ進む物忘れ 丘野 旭(新潟)
37QRコードサンバ飛びだす年賀状 田中 堂太(島根)
38夕焼けで隣もパンを焼いている 福本 清美(千葉)
39憧れの智恵子の空を闊歩する 七海 陽子(福島)
40異次元がどんな次元か見てみたい 近沢さなえ(岐阜)
41タッチ交代リバーシブルの僕と影 森井 克子(大阪)
42ひらがなの言葉に咲ききってしまう 小室 雪湖(神奈川)
43ネギはネギ恋には恋の刻み方 橋倉久美子(三重)
44もう夢など見ない固茹でのたまご 越智 学哲(愛媛)
45秘め事で透明になどなれぬ海 御堂美知子(三重)
46無人島歎異抄よりスマホです 白山きよべえ(大阪)
47冬ベンチわたしが居ると誰も来ぬ 小畑 定弘(徳島)
48梅咲いて庭に靑鮫まだ来ない 京増 京介(千葉)
49仄白い執着に舞う冬の蝶 森吉留里惠(大阪)
50黙示録掲げて蟻の長い列 西畑寿々女(山口)
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選後感想
特選、誰の柩だろうか。理不尽な戦争などで殺された人であれば、そのことへの怒り怨みで死者も死にきれず起き上がってくるのかもしれない。
秀1、寿命は自分では決められないが、いまのところとくにどこも悪くないしと。人生を達観したような詠みぶりがいい。
秀2、「折り鶴」が「凍る」ような夜だと。孤独感にどこか独特の華。
秀3、よく言われる「生きた証(を残す)」など、どうでもいいと。名を残す必要もない、死んだら無に還るだけだと。樹木葬など、散骨をかんがえる人も増えてきた。
気になる一句、「鬼」とは、たとえば独裁体制の強権国家か。紛争で失われ続ける命は唯一無二。憎しみは憎しみを呼ぶ。そんなニンゲンたちの姿に地球も青ざめるというのだろう。
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