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惜しみなく愛は奪えと曼珠沙華  (橘高 薫風)
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「惜しみなく愛は奪ふ(おしみなくあいはうばふ)」は、有島武郎(ありしま・たけお)が著した評論作品。もう百年も前、1920年発行の有島武郎著作集第十一集『惜しみなく愛は奪ふ』(叢文閣刊)の巻頭に掲載されているのね。

 有島武郎の「愛」に関する思想が綴られた作品。人を愛するということは、相手のすべてを奪って自己のものにすることという思想なのね。俳人の三橋鷹女(みつはし・たかじょ)はこれを援用して「鞦韆(しゅうせん)は漕ぐべし愛は奪ふべし」という、有名な句を詠んでいるのね。句意をいえば、鞦韆はブランコのこと。ブランコは漕ぐ。そして愛は奪わなければ愛しているような気がしないと。ゆるい愛ではだめ、愛を自分のものだと感じないというのね。ブランコは、漕げば漕ぐほど高くなり、怖くなっていくもの。漕ぐべしと。それが、愛は奪ふべしに繋がるのね。

 表題の句の作者橘高薫風(きったか・くんぷう)も有島武郎の影響を受けたのか、自分の句に援用したのね。しかしなぜ曼殊沙華(まんじゅしゃげ)(彼岸花)なのか。辞書によると曼珠沙華は仏語(仏教用語)で、赤く(一説に、白く)柔らかな天界の花なのだとか。見る者の悪業を払うといわれ、天人が雨のように降らすのだとか。妖艶で、花期の短さにもかかわらずこれほどの存在感と迫力をもつ花はないだろう。鮮血を思わせるその色彩ゆえか、シビトバナなどの不吉な異名もあるのね。(写真:白い曼珠沙華)

 二物衝迫、橘高薫風は曼珠沙華にどんなイメージをもっていたのか。曼珠沙華にはその印象的な赤ゆえか、「情熱」「思うのはあなた一人」といった花言葉があるのね。花言葉を知っていたわけではないだろうが、そのあたり、または上記のことを直感的に受け止めて詠んだ句なのだろう

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