
それにもかかわらず 死刑制度は廃止すべきである
ホ・イルテ(許一泰) 東亜大学校 法学専門大学院 教授
韓国死刑廃止運動協議会会長(ithuh@dau.ac.kr)
韓国では1997年12月末に23人の死刑囚に対して刑を執行して以来、2013年10月現在まで15年10か月間、死刑の執行が行われていない。国際アムネスティは10年以上死刑を執行していない国を、事実上の死刑廃止国と分類している。
韓国はすでに5年10か月前から事実上の死刑廃止国として登録され、人権国家の仲間入りを果たしている。
こうした韓国の状況をうらやましく思った日本弁護士連合会は、2011年末に「死刑制度廃止研究会」を設置し、2012年6月には元法務大臣2人を含む法曹関係者14人が韓国を訪問した。彼らは、韓国が事実上の死刑廃止国となった背景を尋ね、「死刑制度廃止運動協議会」をはじめとする各界の意見を聴取した。
無実の命を何の理由もなく残虐に奪う反人倫的で凶悪な殺人事件が国内で継続的に発生している。このような反人倫的殺人者に対しては、死刑を執行するのが正当であり、また必要であるという主張がある。犯罪者に死刑を執行すれば犯罪の抑止効果が少なくなく、殺人者を死刑に処すことで国家の正義を正すことができる、というのが彼らの論拠である。反人倫的な犯罪を連続して犯し、人間性を放棄した凶悪犯に限っては、死刑の執行を再開すべきだという主張は、国民感情に合致しており、深い訴求力を持っていることは否定できない。
しかし、こうした主張は韓国の人権国家としての地位を損なうだけでなく、合理的でもない。その理由は次の通りである。
第一に、現代国家は「同じ形の復讐」としての刑罰制度を採用していない。反人倫的な殺人犯であっても同様である。復讐はさらなる復讐を生み、社会不安を増大させる。復讐としての刑罰は、すでに克服された旧時代の思想である。
第二に、こうした理由から、世界198か国のうち、法律的あるいは事実上死刑を廃止している国は140か国に達している。死刑廃止国は今後も増加傾向にある。2012年現在、死刑制度を存続させている国は58か国のみであり、そのうち死刑を実際に執行している国は21か国に過ぎない。
第三に、国家は個人のような感情的な存在ではなく、倫理的かつ理性的な存在である。国民に対して嘘をついたり、感情的に対応したりしてはならない。国家が国民に「盗みをしてはいけない」と命じながら、国民の財産を奪うようなことは許されない。同様に、国家が国民に「人を殺してはいけない」と命じながら、自ら人を殺す死刑制度を維持するのは、矛盾の極みである。
第四に、すべての人権国家においては、反人倫的な凶悪犯に対しても、手足の切断などの身体刑は科さない。このような刑罰は残酷で非人道的だからである。手足を切断する刑が残酷で容認できないとすれば、人を殺す死刑制度はそれ以上に残酷な刑罰であり、決して許されてはならないのではないか。
第五に、韓国憲法 第37条 第2項ただし書きには、「(基本的人権を)制限する場合であっても、自由と権利の本質的内容を侵害してはならない」と明記されている。ここでいう基本的人権の本質的内容とは「生命」であり、これは否定できない事実である。
たとえば、手足の切断刑が身体の自由の本質的侵害であるために認められないのであれば、身体の自由の本質的内容とは「人間の肉体」と、その肉体に宿る「生命」の結合によって成立する自由である。すなわち、身体の自由の中から人間の生命、つまり精神を除けば、肉体だけが残るが、生命を持たない肉体は「死体」に過ぎない。人間の死体は身体の自由の本質的な部分とはなり得ず、生命を前提とした肉体のみが、身体の本質的自由を持ち得るのである。
第六に、韓国は2009年、EU(欧州連合)と、EUから引き渡された犯罪者に対しては死刑を執行できないことなどを含む犯罪人引渡し条約を締結し、2011年に国会がこれを批准した。このため、EUから韓国に引き渡された犯罪者が凶悪犯罪を犯したとしても、死刑を執行することはできない。
こうした状況下で、韓国国内で犯罪を犯した者や、日本、アメリカなどから引き渡された反人道的な凶悪犯に対して死刑を執行することは、「法の下の平等」を定めた憲法に反する。
第七に、韓国では、チョ・ヨンス(曺寧洙)民族日報社長や「人民革命党再建委員会」事件の関係者をはじめとする多くの人々が、司法によって殺害される「司法殺人」の犠牲になった。
このような出来事が起きたのは、死刑制度が存在していたからであり、司法殺人を防ぐ最善の方法は死刑制度の廃止である。誤判による死刑を防ぐためにも、死刑制度の廃止は不可避である。
第八に、死刑制度には、殺人をはじめとする反人倫的犯罪に対する実質的な抑止効果がない。
国連人権理事会は1988年と2002年の2回にわたり、死刑制度の存続が殺人事件を実質的に防ぐことができるかどうかについて広範な調査を実施し、その結果、抑止効果があるとは証明できないと発表した。もし殺人行為に対する抑止効果すら疑わしい状況であれば、裁判所が有罪か無罪かが疑わしい場合に無罪を宣告するように、死刑制度もまた、廃止の方向へ進むのが「人権国家」にふさわしい姿ではないだろうか。
第九に、死刑制度は、死刑を受ける者だけでなく、死刑を執行しなければならない刑務官や、死刑囚の家族にも、望まぬ形で大きな苦痛を与える。
これらすべての理由に加えて、死刑制度を廃止すべき最後の理由は、死刑制度が内包する上記のような問題点を解消し、かつ、死刑と同程度に反人倫的凶悪犯の再犯の可能性を永久に遮断することができる代替案――すなわち「仮釈放のない絶対的終身刑」が存在するという点である。
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人を殺めようと思う人間が〈死刑になることを恐れて思いとどまる〉ことなどないと考えます。〈肉親を殺された人が犯人の死刑を望む〉ことは大いにありうることでしょうが、死刑制度の存続の根拠にはならないと考えます。『3719』についても勉強させて頂きました。
植竹 団扇さま
よく分からないのですが。
この先生のおっしゃることがなんとなく理解でき、和文訳をブログにアップさせていただきました。先生のご希望です。
毎日、船内で研究にいそしんでおられるので、そのご様子を拝見、アップさせていただきました。