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あなたならどう読む?❽‥「難解句鑑賞 №008」
オルガンとすすきになって殴りあう  石部  明
 この句の「オルガン」は、かつて学校などで用いられていたシンプルな足踏み式オルガンだろうか。ところどころ音が出なかったり音がすぐに途切れてしまうなどの故障があり、使わなくなった「オルガン」がまだ家の片隅に眠っているという話も耳にしたことがある。
 「すすき」は穂の先から細長いトゲが伸び、鉤のように曲がっている。葉は根の際や茎からたくさんでて、細長い。堅くて、縁には鋭い鉤状のぎざぎざがあるので、皮膚などを切りやすい。
 この句は、「オルガン」と「すすき」が「殴りあう」という。どちらも喧嘩が得意とは思えないのだが。前述のように、「すすき」にはいささか自衛のための武器はある。「オルガン」はブウーブウーと大声は出せる。しかし、そのくらいのことでどちらが勝つとも負けるとも言えない。「殴りあう」のはたぶん口喧嘩ほどのこと。

白鳥の少し汚れた絵を買おう  森中惠美子
 真っ白で首が長いことから、高貴かつ優雅な印象を与える白鳥。冬鳥として湖沼などに渡来する。コオー、コオーと優しく鳴いて首を上下させ、また賑やかにコホーコホーと鳴き交わす。その優美な姿はいかにも霊鳥と言われるだけのことはある。(古事記には、大和に帰る途中亡くなったヤマトタケルの魂は白鳥になって飛び去ったと記されている。)
 この句を味わいながら思いだすのは、俳句では次の句。《生きて来し汚れ白鳥にもありし》(今瀬 剛一)。どちらも、懸命に生きているうちに汚れてしまった「白鳥」の姿に自らを重ねる作者が見えてくる。汚れざるを得なかった「白鳥」のその汚れにこそ、作者の深い共感と哀しみがある。「買おう」はそんな自身への自己肯定だろう。

おろしりんごは現世のようである  小河 柳女
 神道で、「現世(うつしよ)」とは我われが現在生きていると思っている(認識している)世界、この世。対する常世(とこよ)とは、永久に変わらない死後の世界。
 仏教では、輪廻転生していくなかで、いま属している世界のこと。彼岸に対する此岸(しがん)。『金剛般若経』には「一切の有為の法は、夢幻泡影の如し」とあり、現世(げんせ)を夢幻、泡のように儚いものと捉えている。仏教では、現世は否定的に捉えられてきたといえる。
 この句は、「おろしりんご」の形状を考えると泡に似てあたかも夢まぼろし、儚い「現世」のようだと言っている。

甘味料ばっかり 説得力が無い  金築 雨学
   ズルチンやチクロなどの毒性が問題になり、相次いで使用が禁止されたことが、ずいぶん前だが記憶にある。砂糖よりも製造コストが低いことで、いまも人工甘味料が菓子などに使用されている。人工甘味料のプラスの側面は、食品の糖類含有量を減らすことによりカロリーを抑えられること。
 この句は、砂糖など天然甘味料をふくめ、甘ったるいだけでは「説得力」に欠けるという。食物に限らず、何ごとにおいてもピリリと締める塩や辛子のような存在が必要なのだと。

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