Loading...Loading...

 初期の句に、巧いか否かはさておき鶴彬のたましいの片鱗がかいま見える。下記はふだんわれわれが目にすることはない、もっとも初期、彬15歳の句。少年の作品だとしても、〇印の句には見るべきところがあるだろう。
…‥‥‥‥‥‥………‥‥‥‥‥‥………‥‥‥‥‥‥………‥‥‥‥‥‥……
○静な夜口笛の消え去る淋しさ
○燐寸(マッチ)の棒の燃焼にも似た生命(いのち)
○皺に宿る淋しい影よ母よ
秋日和砂弄(もてあそ)んでる純な瞳
思ひ切り笑ひたくなった我
無駄な祈りと思ひつゝ祈る心
運命を怨んで見るも浅猿(あさま)しさ
其の侭に流れんことを願ふ我
○日章旗ベッタリ垂れた蒸暑さ
いい夜先(まず) 幾つかの命ゆがめられ
 
○子供等の遊びへ暗影迫り来る
○海鳴りが秋の心へ強く響き
表現派の様な町の屋根つゞき
悲しい遊戯を乗せて地球は廻る
外燈へ雨は光って目がけ来る
得意さを哀れさに見る哀れさ
滅びゆく生命(いのち)へ滅ぶ可(べ)きが泣(なき)
生活へ真剣になれぬある生活
○一跳ね一跳ね魚(うを)の最後が刻まれる
大きな収穫総てを忘れた喜び
 
泣く笑ふそして子等の日は終り
○磯馴松(そなれまつ)もう冬近い唸りなり
諦めてか諦めずか柿の葉は落
なき倒す風総ては大地へしがみ付
生きる死ぬ必死の侭を恐怖し
○地球を封じ込めたやうな空
○夜の幕払はれて地上の無惨なる
飯粒を戴いて拾ふ我が母
腹が減った時だけ飯が旨い
(こえ)臭い侭の身体のある誇り
 
瞬間を求めてゐる子供達
思切り笑へなく成(なっ)た悲しい喜び
人生の努力に疲れた老人の額
太陽に雲と地球が染ってゐる
○秋風が地球の上を嘗めて行く
鳥が枝に止まるが如き人の生命
○儚ないと捨られもせぬ命なり
○大きな物小さな物を踏みにじり
風船玉しかと掴めば破れます
束縛なく生きて悲哀なく消え
 
散る菊へ私一人だけが泣く
鉄鎖(てつくさり)の解(とけ)る日生活の恵(めぐみ)を見せ
何時でも乾き切らない大地なり
○煙突の煙の行方が知れない世
悪人の心へ夕陽強う照り
○争ひを夫(それ)と思はぬ鶏を見る
柿の木に雀ふくれる朝となり
○籠の鳥歌って女工帰るなり
桃割の瞳 何も彼(か)も諦める
赤とんぼにも生命(いのち)があります

ポストする LINEで送る ブックマーク
❤️ ひざポン
ありがとう!

気軽にポチっと
どうぞ(無記名)

 鶴彬(つる あきら、1909-1938)は、プロレタリア文学の影響を受けた反戦川柳作家。石川県生まれで、本名は喜多一二(きた かつじ)。父は竹細工職人だったとか。(叔父さんの養子になったのね。)  ... 「⦅214⦆『川柳界の小林多喜二』と言われた鶴彬(つる あきら)について」の続きを読む
 昨日11日に届いた『川柳マガジン年鑑 2021』にさっそく目を通してみた。下記は、「´20年度 川柳作家会心の一句」から、抄出30句。(あとから付け加えるかもしれません。) …‥‥‥‥‥‥………‥‥... 「⦅215⦆昨日届いた『川柳マガジン年鑑 2021』の「´20年度 川柳作家会心の一句」から30句拾ってみた」の続きを読む
 堺市の堺番傘川柳会、そこの柳誌「ちぬ」に月例句会の前月課題(2句出し)の佳句に対する鑑賞文が掲載されている。その欄を長く日野愿さんが担当しておられた。そこにずっとほぼさいご(止め)に掲載されていたの... 「⦅216⦆日野愿さんの(あきこの句の)鑑賞文」の続きを読む
しんぶん赤旗、「読者の文芸」川柳欄(8月3日(火)付) ミンミンと民意を聴けと蝉が鳴く  大阪府 砂本 邦彦  〈評〉ミンミンゼミが民意を訴える「民民蝉」だったとは。コロナ禍での五輪を危惧する声も雑音... 「⦅217⦆「読者の文芸」川柳欄(8月3日(火)付、たむらあきこ選)」の続きを読む
野(や)を行けば野に背かれている独り いまにして思うよき妻だったなあ よき妻で貧乏所帯零さない よき夫そいつは忸怩たる想い 世事に疎い二人ままごとだったなあ 逝く秋の真っ只中に独り居る 俎で往生際の悪... 「⦅218⦆柳人紹介 (26) 日野 愿さんの20句」の続きを読む
 6月30日に逝かれた日野愿(ひの・すなお)さん(愿さんは、ご自分に先生と敬称を付けないようにおっしゃったのね)の句をアップしようと句集『自家撞着』を探しているのだが。なにしろ書籍他を乱雑に積み上げて... 「⦅219⦆去りゆく人へ」の続きを読む
Copyright All rights reserved. SHINYOKAN PUBLISHING illustration by Nakaoka.K