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 丹念に指がなくなるまで洗う
 賑やかに片付けられている死体
 てのひらに蝶をころした痕があり
 荒縄で結んだ過去が吊ってある
 戸棚からごとりと亡父が降りてくる
          石部明『賑やかな箱』より
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 4月20日(土)の岡山県天神山文化プラザに於ける「石部明追悼川柳大会」の発表誌を送ってきていただいた。p.25の前田一石氏抜粋の30句からさらに5句を抜粋。30句には、まだ氏の句の神髄は見えていないが、この5句にのちの句に至る片鱗が覗いているように思った。下記は大会の入選句から。
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 なにを握ったか 大人しくなった         小島 蘭幸
 とてもしずかな言葉でわたくしを握る      たむらあきこ
 美しく握りつぶしてくださった            吉松 澄子
 握っても握り返してこない月           牧野ねえね
 たましいを握る笑っていいですか        榊  陽子 (柴田夕起子選「握る」 準特選)
  
 点滴を待つ軍艦が並ぶ湾            井上 早苗
 湾というかたち誘ってくれている         たむらあきこ
 この湾はなーんも知らん顔しちょる       石田 柊馬
 湾を出て湾のかたちを確かめる        徳永 政二
 ちちははがなじりあってた山羊もいた     石田 柊馬

 いつまでも山羊であなたはオルガンで    徳永 政二 (松永千秋選「山羊」 特選)
 ほうほうと顎が泣くから逢いにゆく       たむらあきこ
 兵隊アリの顎を淋しいなと思う         福光 二郎 (徳永政二選「顎」 準特選)
 遮断機の向こうへ顎がはいります    たむらあきこ (徳永政二選「顎」 特選)
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【評】句語として「遮断機」はけして新しくはないが、題「顎」がうまく作用して新鮮に感じられた。そして「はいります」。最初、全体のバランスから表記は「入ります」でもと思ったが、作者の心の動きが読めるということで、やはりこのままでいいと納得した。現実に対する切実感が伝わるこの言葉で特選にさせていただいた。
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 粗挽きの手前で少しだけ笑う         くんじろう (広瀬ちえみ選「にやり」 準特選)

 ホーホケキョと上手に鳴いてみよ明   石田 柊馬 (樋口由紀子選「石部明」)

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 柳誌一冊に詰まっている7名の選者の選評ほか、これから繰り返し熟読させていただこうと思う。大会を通じてもっとも感銘を受けたのは、《ホーホケキョと上手に鳴いてみよ明》(石田柊馬)の1句。大会の印象はこの1句に尽きている。

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ホーホケキョと上手に鳴いてみよ明 (石田柊馬)”にコメントをどうぞ

  1. 伊東志乃 on 2013年6月15日 at 9:58 PM :

    こんばんは(^^*)

    湾というかたち誘ってくれている

    この様なアプローチがあったとは………「湾」の兼題で………
    参考になりましたm(__)m

    • あきこ on 2013年6月15日 at 10:11 PM :

      伊東志乃さま
      こんばんは~。
      入選句からさらにさらに絞りました。
      読み込んで、また追加するかも知れません。柳誌一冊でかなり勉強させていただけます。
      石部明氏のこころざしは引き継がれていくと思いますね。魅力的な川柳人でした。

      • 伊東志乃 on 2013年6月15日 at 11:20 PM :

        ホーホケキョと上手に鳴いてみよ明

        深いですね………
        まるで小学生のような単語のつらなりですが、このように深く詠むことが出来るなんて………素晴らしいです(^^*)

        • あきこ on 2013年6月16日 at 6:00 AM :

          伊東志乃さま
          この世で、もっとも深い関わりをもった友人の死なのだと思います。
          この句は、会場で披講を聴いていて、身体の芯まで響きました。
          どんなに脱力されたことかと思います。
          弔吟としても、後世にまで残る句ですね。石田柊馬氏、石部明氏の友情とともに。

  2. 竹内いそこ on 2013年6月15日 at 10:38 PM :

     あきこさま こんばんわ
    沢山の人に愛されたお人柄なのですね。
     
     ホーホケキョと上手に鳴いてみよ明

    もう一度ウグイスになってでもあらわれて欲しい という心かな。じーんときますね。

     ほうほうと顎が泣くから逢いにゆく  

     説明のつかない切なさが哀しくていいですね。泣いているのはしゃれこうべの顎? どうも今晩の気分はそちらの方に連想がいってしまってすみません。

    • あきこ on 2013年6月16日 at 6:09 AM :

      竹内いそこさま
      最高の大会でしたね。
      よい大会には、よい川柳人が集まる。お互いにひびきあうものがあって集まってくるわけです。
      ここでは、全力で闘おうという気にさせられました。石部明というすぐれた選者でもあったわけで、まさに巨星墜つ、の感がありました。

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