川柳マガジン3月号「難解句鑑賞」で松橋帆波氏が私の句を下記のように鑑賞して下さっている。
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乱調も足さねば生が錆びてくる たむらあきこ
歌の文句ではないが、「人生色々」である。誰しも順風満帆な人生を求めるが、人生は一人芝居ではない。振り返れば、様々な人が、それぞれの役割を担うことで今が存在する。辛いと思うことも、後で振り返ればそういう役割だったと理解できる場合もある。何も起こらない人生は、果たして「生」なのだろうか? 「生きる」とは「活きる」でもある。
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【自句自解】
乱調も足さねば生が錆びてくる たむらあきこ
瀬戸内晴美(現・寂聴)氏に『美は乱調にあり』という著作がある。甘粕事件で、アナーキスト・大杉栄と共に虐殺された「青鞜」最後の編集者・伊藤野枝の波乱に満ちた生涯を描いた昭和のベストセラー。 激動の時代を、恋と革命に生きた女性を鮮やかに描き出す伝記小説である。
この表題は下記の大杉栄の一文(抜粋)から採られたものと考えられる。これを下敷きにして、私の句、《乱調も足さねば生が錆びてくる》がある。
レールの上を走る人生もよいだろうが、意思をもって逸れてみるのも1つの生き方である。違う角度から見れば、人生は別の花野を拡げているかも知れない。人生が豊かであるとは、決められたレールの上を辿ることではない。我われの「生」に活力を与えてくれるものが「乱調」なのである。《諧調を択ぶわたしにある渇き (たむらあきこ)》
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伊藤 野枝(いとう のえ、1895年1月21日 – 1923年9月16日)は、日本の婦人解放運動家、作家。戸籍名は、伊藤ノヱ。雑誌『青鞜』で活躍。わがままと言われる反面、現代的自我の精神を50年以上先取りした。不倫を堂々と行い、結婚制度を否定する論文を書き、戸籍上の夫である辻潤を捨てて大杉栄の妻、愛人と四角関係を演じた。
人工妊娠中絶(堕胎)、売買春(廃娼)、貞操など、今日でも問題となっている課題に取り組み、多くの評論、小説や翻訳を発表した。甘粕事件で殺害される。
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…そして生の拡充の中に生の至上の美を見る僕は、この反逆とこの破壊との中にのみ、今日生の至上の美を見る。征服の事実がその頂上に達した今日においては、階(諧?)調はもはや美ではない。美はただ乱調にある。階(諧?)調は偽りである。真はただ乱調にある。
今や生の拡充はただ反逆によってのみ達せられる。新生活の創造、新社会の創造はただ反逆によるのみである。…(大杉栄・「生の拡充」)
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乱調も足さねば生が錆びてくる
この句を初めて読ませてもらったとき、小説「美は乱調にあり」が脳裏にうかびました。生が錆びるとはなんと上手い表現と思っていました。今日ブログを拝見して納得しました。若いころ一気呵成にこの小説を読みました。このように句を作るのかと勉強させてもらいました。ありがとうございます。
啓子+さま
ずいぶん前ですよねー。この本を読んだ前後から瀬戸内晴美さんのファンになりました。あと、出家にもびっくりしました。
「乱調」のない人生ほど味気ないものはありません。【自句自解】に書いた通りです。結局恋であれ、革命であれ、「イノチ」を燃やして生きないと駄目だと。生き甲斐を感じながら生きるということでしょうか。