Loading...Loading...

 忍耐とは、耐え忍ぶこと。理不尽なことをされても、仕返しをしたりしない。忍耐強いとはそのような忍耐力があることである。

 仏教においては、さまざまな苦難や、迫害に耐え忍ぶことを忍辱(にんにく)というようだ。「眼を瞑る」とか「涙を呑む」とか、耐え忍ぶことを表す熟語にもいろいろと表現がある。

 わたしは、かなり忍耐強いほうである。よくそんな状況で怒らずにいられるなと言われることもある。しかし寛容なのかと言われれば、そうでもないのだ。内心はともかく争いを好まず、協調性があるということは言えるかもしれない。自分を抑制する習慣は、幼い頃から身についている。

 なぜ忍耐するかというと、わたしの場合、相手と価値観が違うということがある。ケンカを仕掛けられたことはあるが、相手をしようとは思わなかった。相手にするほどのひとでもなく、時間も惜しかったからである。自分に近いひととはケンカもできるが、世界の違うひととはケンカする意味もない。忍耐するか否かは、何を重要視するかによるだろう。とにかく、どうでもいい相手と無意味なケンカはしない。

 かつてわたしは、頼まれて瓦版の会という川柳結社に所属していた。「(交通費も同人費ももつから)後継者として来てほしい」という、前田咲二先生からの熱心なご依頼があったからである。時事川柳を詠むつもりはまったくなかったので、なんどもお断りしたのだが、先生の熱意に負けた。小西幹斉氏や中山おさむ氏など、ご友人に「うちの後継者や」と句会の後などに紹介していただいた。

 なにも知らずに同人(編集同人)になったわけだが。当時の編集人(現代表)と三人の席で、前田先生が「(二人のうち)どちらかがおれのあとを継いでくれ」とおっしゃったあと、現代表の嫌がらせが始まった。先生のおられないところで、「おい!!タコ!」と人の通る通路で大声で怒鳴ったりされた。「やめて」と、小さな声で返すくらいのことだった。

 忍耐が過ぎたのかもしれない。黙っていたことがよくなかったのかもしれない。現代表は、そんな子どもじみたやり口が、あるいは恫喝には向いていると学習していたのかもしれない。そういう人生を歩いてきたのだろう。唖然としたが、そういうふるまいもいつかは変わるだろうと、あえて逆らいもせずにスルーしていたのだった。

 いまで言う〈モラハラ〉。男尊女卑的な傾向のある現代表に対し、忍耐力があり過ぎたのかもしれない。ふつうなら、会長から頼まれて気の進まなかった会の同人になっているのだから、そんなことをされればすぐに辞めていたはずなのだ。

 忍耐が相手をいい気にさせたのかも知れない。”コイツは何を言っても、黙っている”と。夫婦間で夫の暴力がひどいのに、忍耐力があったばかりにがまんしてしまい、暴力がさらにひどくなってしまったというのに似ている。忍耐も過ぎると、相手をのさばらせてしまうということがあるのだ。そんな忍耐なら、してはいけない。なにを言っても、しても許されると勘違いさせることは、それだけで間違っているのだ。

 ひとによっては、こころが壊れてしまうこともあるだろう。ストレスでからだが病んでしまうこともあるだろう。自分はそういうことへの耐性が低そうだと思ったら、無理はしないほうがよい。サッと、相手から離れることである。

 「(現代表とは)一緒にやっていけない」と後継者になることをお断りしたとき、前田先生は「あんたも、たたかえ」とおっしゃったが、そんなことで自分のたいせつな時間を浪費することはできない。「先生、(あきこは)肩書はもういいのよ。自分のちからでやっていくから」と申し上げたのである。
 
 前田先生のおられた瓦版の会で会を支え、先生を支えた十年間に悔いはない。しかし、先生は天国で、わたしが永久選者であるにもかかわらず「咲くやこの花賞」の選者を現代表の意向で外されていることに、激怒しておられるだろう。あり得ないことを言い、(日本人なら)できないことをするのが現代表なのである。

 かつてホスピスに三人でお見舞いに行ったときの先生のことばは、「瓦版の会が、おかしな方向に曲がっていかないように、三人で見張っておいてくれ!」だった。厳しい表情で、ことばを区切って、さいごを叫ぶようにおっしゃった。「読む気がせん」と、現代表の「よみうり時事川柳」の選を亡くなられるまでいちどもご覧にならなかった。(これは、たぶん添削がなっていないからなのね。)会のことをさいごまで心配されていた先生の、どれほどの後悔だったのだろう。

ポストする LINEで送る ブックマーク
❤️ ひざポン
ありがとう!

気軽にポチっと
どうぞ(無記名)

コメントはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Post Navigation

Copyright All rights reserved. SHINYOKAN PUBLISHING illustration by Nakaoka.K