※2月いっぱいで抄出を終えるため、急いでいます。先生のたましいは、真っすぐ春風のような詩人のたましいでした。響き合ったのは、その部分。ご自分同様に俳句から短歌(わたしは短歌から俳句)、さいごに川柳に辿りついたわたしにこころを許し、大切にしてくださった。後継者として育ててくださった。年齢とともにだんだんご友人を亡くされてゆく先生にとって、わたしがさいごの友人の一人であり、ただ一人の弟子(先生のことば)であったことは間違いない。
『前田咲二遺句集 平成9年』【29】
カード一枚にすがって生きている
ウイルスも花粉も吸って元気です
古希の艶 深夜番組からもらう
寅さんが好き寅さんで生きてやる
学のない妻がまぶしく見えてくる
誤字見つけるとしたり顔する校正子
偽名だが誰かとわかる祝電だ
再婚を考えている花鋏
花束の白い嫉妬が見えますか
ぼくを葬る宴が賑やかにつづく
郷ひろみのサイン会ですへえさよか
父という芯 口数は少ないが
亡母に似たお地蔵さんの背をさする
野仏よ お前も俺もホームレス
決心がつかぬうどんを食べている
ふるさとよ もう帰ってもいいですか
ふるさとに卵の茹だる出湯がある
もう嘘はないかと顔を覗かれる
貴様への黙祷をするクラス会
きなくさい花環が一つある葬儀
年賀状 欠礼をしてそれっきり
楢山への道に答が落ちていた
金を儲ける話をききたがる耳だ
生き下手で尻尾がうまく切れません
激情のぼくを仏と人は呼ぶ
立ち合いの頭突きが茶の間までひびく
闘鶏の羽根がささっている筵
ひとところ包囲を解いておく打算
どうにでも取れる答をポケットに
その前に言っておきたいことがある
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