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 人物像も、そこに書かれた略歴以外はほとんど知らないが、時事川柳専門の「川柳瓦版の会」の会長を務めたというから、柳壇でもかなりの実力者だったことは想像に難くない。
 瓦版の会といえば、『道頓堀の雨に別れて以来なり』(田辺聖子著)の評伝でも知られる高名な川柳作家、岸本水府が創立した大阪の名門結社である。それを率いた咲二さんなら、句集の一つや二つは出ていようと思いきや、国会図書館にも見当たらなかった。句集を出さないのが流儀なのかもしれない。
  靖国で会う約束
 そこで先の特集から数句を選び、鬼籍に入った人から直接お叱りをこうむることはなかろうと不謹慎にも高をくくって、自分なりの解釈を加えてみた。
 十一桁をわたしの戒名にしよう〉住民票コードこそが「私が私であること」の証明だと。神仏に願掛けするときも、マイナンバーを忘れずに唱えておきたい。〈円周率3では丸くなれぬ月〉不適切なゆとり教育を斬るのに日本人が愛でる月をもってきた。ゆとりが風流を損ねるとは何とも皮肉ではないか。
 日本はいいね「一杯やりますか」〉チョイト「一杯」のつもりが二日酔いになっても、日本語のせいではありません。
 若い女と妻を見比べたらあかん〉〈黒木瞳が死んでと言えば死ぬだろう〉悪戯(いたずら)っぽさがまたいい。私だって沢口靖子が死んでと言ってくれれば…。
 珠玉中の珠玉は以下の名句ではなかろうか。〈軍隊とはっきり言えば楽になる〉円周率3と同じで、姑息(こそく)な解釈を振り回すから辻褄(つじつま)が合わなくなる。他国の「軍隊」による脅威は自国の「軍隊」をもって防ぐしかない。そんなの自明の理だ。
 靖国で会う約束があるのです〉靖国で会おうと言い交わして散っていった戦友。彼ら英霊が靖国で待つのは戦友や遺族、縁者だけではない。後の人たちに未来を託して死守した祖国であれば、現下の日本の指導者らとも会う約束が、言わずともできていたに違いない。
 靖国参拝するしないするしないする〉どっちやねん。花占いでもあるまいに。国会の先生方はどこの国に遠慮して逡巡するのか。エイと覚悟を決めて参拝すれば済む話でしょ。
  いま春季例大祭が
 昨年12月号の川柳マガジンに前田咲二さんの追悼企画が組まれ、咲二さんは江田島の海軍兵学校に学んだと紹介されていた。なるほど句を支える骨っ節みたいなものは、そこで鍛えられた海軍精神だったのか。
 切っ先をいつも自分に向けている〉敵に刃を向けるだけの凡愚の政治家が多い中で、己の喉元に切っ先を当てられる真の政治家はさて何人いるだろう。
 靖国神社では昨日から3日間の日程で春季例大祭が行われている。(せこぐち さとし) 2018.4.22

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つづき‥産経新聞(2018/4/22)に載った故・前田咲二先生に関係する一文「する? しない? どっちやねん」(論説委員「日曜に書く」清湖口 敏(氏)) を転載”にコメントをどうぞ

  1. 次根 on 2018年6月16日 at 6:23 PM :

    いい記事ですね、イライラがすっきりします。

    • たむら あきこ on 2018年6月16日 at 9:11 PM :

      次根さま
      秀才ですよね。ほんとうに頭のいい先生だった。新宮中学を出て、当時は東大京大とは言わなかった時代ですから、よくできる生徒は海兵か陸士を受験したのね。
      海兵の方が難関(東大より難しいと言われた)だったので、両方受かったが海兵へ行ったとおっしゃっていました。
      当時の超エリートですよね。
      そこで、身命をなげうつ覚悟で国のために日々訓練に励んだわけです。
      戦後、そういう人々を過小評価しようとする傾向がありますが。
      日本人は分かっていますよね。

  2. 前川奬 on 2018年6月17日 at 12:29 PM :

    たむらあきこ様
    これらの作品いずれも初めて読みました。
    「珠玉中の珠玉」と挙げられた8句の内、
    <軍隊と言えば楽になる>
    <切っ先をいつも自分に向けている>
    以上の2句がわたしの選ぶ「珠玉」です。
    ありがとうございました。

  3. たむら あきこ on 2018年6月17日 at 1:23 PM :

    前川奬さま
    「珠玉」かどうかは、選ぶ人の眼によるのね。
    先生がこれらを自身の「珠玉」として選ばれたわけではありません。

    新葉館出版さんから「柳豪のひとしずく」への掲載を依頼されたのは、ずっと初めの頃でしたが(たぶん尾藤先生の次くらい?)、よい返事をなさらなかったようなので。
    お忙しいこともあり、なんどか頼まれて「(新葉館に残っているものから)そちらで選んどいて」くらいのことだったと思います。
    ちなみに、あきこの「柳豪…」は間違って入った最初の1句を除いて自選ですが。
    先生は、おおらかに出版社に任されたのね。
    先生らしいところです、そこも。

    そういうことで、先生の「珠玉」は別のところにたくさん眠っているでしょう。
    掘りおこさないといけないのね。

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