柳澤桂子(やなぎさわ けいこ) … 当代日本を代表する生命科学者にして歌人。お茶の水女子大学名誉博士。
『生きて死ぬ智慧』を、般若心経を分かりやすく説いた現代人向けの書として愛読している。大切なひととのいつか必ず来る別れにも安心して向き合えるように。下記は科学者としての目で読み解いた般若心経の一部分。
ひとはなぜ苦しむのでしょう……
ほんとうは
野の花のように
わたしたちも生きられるのです
もし あなたが
目も見えず
耳も聞こえず
味わうこともできず
触覚もなかったら
あなたは 自分の存在を
どのように感じるでしょうか
これが「空」の感覚です
すべてを知り
覚った方に謹んで申し上げます
聖なる観音は求道者として
真理に対する正しい智慧の完成をめざしていたときに
宇宙に存在するものには
五つの要素があることに気づきました
お聞きなさい
構成要素は
実体をもたないのです
形のあるものは形がなく
形のないものは形があるのです
感覚、表象、意志、知識も
すべて実体がないのです
お聞きなさい
彼はこれらの要素が「空」であって
生じることもなく
無くなることもなく
汚れることもなくきれいになることもないと知ったのです
お聞きなさい
私たちは 広大な宇宙のなかに
存在します
宇宙では
形という固定したものはありません
実体がないのです
宇宙は粒子に満ちています
粒子は自由に動き回って形を変えて
おたがいの関係の
安定したところで静止します
お聞きなさい
形のあるもの
いいかえれば物質的存在を
私たちは現象としてとらえているのですが
現象というものは
時々刻々変化するものであって
変化しない実体というものはありません
実体がないからこそ 形をつくれるのです
実体がなくて 変化するからこそ
物質であることができるのです
お聞きなさい
あなたも 宇宙のなかで
粒子でできています
宇宙のなかの
ほかの粒子と一つづきです
ですから宇宙も「空」です
あなたという実体はないのです
あなたと宇宙は一つです
‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥
『生きて死ぬ智慧』。下記はあとがきから抜粋。
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この36年間私は苦しみました。孤独でした。人間であることの悲しみを存分に味わいました。科学の限界を知らされました。病は悪くなる一方でした。……
私は、釈迦という人は、ものすごい天才で、真理を見抜いたと思っています。ほかの宗教もおなじですが、偉大な宗教というものは、ものを一元的に見るということを述べているのです。「般若心経」もおなじです。
私たちは生まれ落ちるとすぐ、母親の乳首を探します。お母さんのお腹の上に乗せてやるとずれ上がってきて、ちゃんと乳首に到達します。……これは本能として脳の中に記憶されていることで、赤ちゃんが考えてやっていることではありません。
けれどもこの傾向はどんどん強くなり、私たちは、自己と他者、自分と他のものという二元的な考え方に深入りしていきます。元来、自分と対象物という見方をするところに執着が生まれ、欲の原因になります。……
ところが一元的に見たらどうでしょう。二元的なものの見方になれてしまった人には、一元的にものを見ることはたいへんむずかしいのです。でも私たちは、科学の進歩のおかげで、物事の本質をお釈迦さまより少しはよく教え込まれています。
私たちは原子からできています。原子は動き回っているために、この物質の世界が成り立っているのです。この宇宙を原子のレベルで見てみましょう。私のいるところは少し原子の密度が高いかも知れません。あなたのいるところも高いでしょう。戸棚のところも原子が密に存在するでしょう。これが宇宙を一元的に見たときの景色です。一面の原子の飛び交っている空間の中に、ところどころ原子が密に存在するところがあるだけです。
あなたもありません。私もありません。けれどもそれはそこに存在するのです。物も原子の濃淡でしかありませんから、それにとらわれることもありません。一元的な世界こそが真理で、私たちは錯覚を起こしているのです。
このように宇宙の真実に目覚めた人は、物事に執着するということがなくなり、何事も淡々と受け容れることができるようになります。
これがお釈迦さまの悟られたことであると私は思います。もちろん、お釈迦さまが原子を考えておられたとは思いませんが。ものごとの本質を見抜いておられたと思います。現代科学に照らしても、釈尊がいかに真実を見通していたかということは、驚くべきことであると思います。
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こんにちは
よいお話しありがとうございました。さっそく本を買って読みます。
次根さま
知人が、がんの末期なのね。
何をどうしてあげられるものでもないのですが、この本を差し上げようと思って、いま届くのを待っているのね。
ずいぶん前の本ですが、通販で古本を手に入れられます。
ありがとうございます。20歳の終わり頃 信心銘 を聴きました。
それから今までいろいろと 執着と迷いの一生です。もうそろそろ・・。
次根さま
繰り返し、味読するに足る一冊だと思います。
宗教にのめり込むことはしないあきこですが、この本は科学者の目で般若心経を読み解いているので。
いずれこの世を去らねばならないわけですが、安心したいのね。
誰もが安心してこの世の生を全うできるようにと思うのね。
写経は、昨日も柳友と一緒の喫茶店で。
次の吟行地、高野山でももちろん写経するつもり。
ではまた。