大伯(大来)皇女(おおくのひめみこ)は『万葉集』に謀反人とされて自害した同母弟の大津皇子(おおつのみこ)を想う歌を残している。以下、6首。
巻第2 105~106番(大津皇子がひそかに伊勢神宮に下向してきた時に詠んだ歌)
●わが背子を大和に遣るとさ夜深けて 暁(あかとき)露にわが立ち濡れし
●二人行けど行き過ぎ難き秋山を いかにか君が独り越ゆらむ
同163~164番(大津皇子薨去(こうきょ)後、退下(たいげ)・帰京途上で詠んだ歌)
●神風の伊勢の国にもあらましを なにしか来けむ君もあらなくに
●見まく欲(ほ)りわがする君もあらなくに なにしか来けむ馬疲るるに
同165~166番(大津皇子を二上山(ふたかみやま)に移葬したときの歌)
●うつそみの人にあるわれや明日よりは 二上山を弟背(いろせ)とわが見む
【通釈】現世に留まる人である私は、明日からは、二上山を我が弟として見よう。
●磯の上に生ふる馬酔木(あせび)を手折らめど 見すべき君がありといはなくに
どの歌からも切々と姉・大伯皇女の悲傷がつたわってくる。姉が弟をいとおしく思う気持ちは古今変わらない。1300年後の〈うつそみ〉を生きるわたしが大伯皇女の心を心としてこの山に向かうのも、この6首に導かれてのことである。
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