前月号近詠鑑賞
諭して帰す親心 和歌山市 たむらあきこ
偲ぶという文字しみじみと人思う
「偲ぶ」、美しい日本語の一つ。亡くなった人を振り返ることができることも、人間としての美しさ。
マニキュアもペディキュアもしてまだ女
いつまでも「まだ女」。これからもずっと「女」でいたい自分と、どう飾っても否応なく老いてゆく現実の自分との相剋。
笑い声仲間の耳が寄ってくる
「耳が寄ってくる」がよい。「笑い声」の方へ明るい方へ「寄ってくる」、「耳」。
アルバムは増やさないでとむごいこと
撮ることが多ければ当然嵩ばってくる「アルバム」。じゃまになるからと写真を撮ることを制限するのは(嫁に焚きつけられた)息子だろうか。
目薬も一緒に冷やす冷蔵庫
冷えているほうが差し心地がスッキリする「目薬」。
ふる里は昔の音で風が鳴る
「昔の音」がよい。自然がそのまま残っているのだろうか。古い木造の家で隙間があり、屋内で聞く風音が「昔」と変わらないということか。
元気かと聞かれていいえとも言えず
体調がよくないことを、自分の方から積極的に話すわけにもいかない。
父に似た手が役にたつ掴み取り
「父に似た」大きな「手」であると。若い頃は恥ずかしく思うこともあったが、「掴み取り」には役に立つと。背景に父への想い。
モカで始まるおひとりさまの遅い朝
「おひとりさま」であることにいまは負の意識はない。やっと得た自由のありがたさ。
少年の素直がなぜか物足らぬ
「素直」もいいがもう少し覇気が欲しいと。反抗期も人間として大切な成長の過程なのだからと。
当日の雨を願っている不如意
金銭的な「不如意」。真面目な作者が、義理を欠くことへの言い訳を探している。乏しい年金生活ではご祝儀を包めないことへの忸怩たる思い。言い訳ができるように「雨」になってほしいとの願い。
さりげなく視線をそらす気の弱り
争ったり言い返したりできるのは若さがあればこそのこと。年齢とともに面倒を避けたい、波風を立てたくないという思いが強くなる。
嫌だとは言えぬかわりに胃が痛む
体は正直。拒否できないストレスが遂には自分の体を蝕んでしまう。
生活がかかる炎天下の日銭
耐えがたかった今年の炎暑。それでも仕事を休むわけにはいかない。「生活」のための「日銭」を稼ぐためには。
朝夕の雨戸が重くなってくる
実感句。「雨戸」を繰る力もだんだん弱ってきたと。誰に対しても老いは容赦ない。
やるせなく諭して帰す親心
親元に何かを相談に来た娘(息子)。何もしてやれないが、話を聞くだけならできる。「諭して」、どうか今後とも無事にうまくいってくれるようにとの切ない「親心」。
(川柳瓦版の会)
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どの句も心に沁みるいい句ですね~
同世代だと思われる実感句はしんみりと響いてきます。
ちょっとさみしいような悲しさに惹かれます。(私は今風邪で低空飛行していますので余計に・・)
あきこさんの先生が回復されてあきこさんも復活してきましたね~
これからが冬の本番、気力で乗り切りましょう。
加代さま
回復ということではないのね。
これから先生の闘いです。
今日はまだ早いと思うので、明日午後か明後日(負担をかけないようにほんの数分)お見舞いに伺います。
すぐれた句は、あちこちの柳誌にちらほらと転がっています。
それを発見、拾い上げて、庶民のこころの歌として残したいものですね。
一生に個人が詠める佳句は限られていても、多くの人々の句が感動の一冊になるといいですね。
川柳の万葉集、そんなかたち。
お風邪、お大切に~。 マタ(^^)アオウネン