Loading...Loading...

 いま・かつて・これからをつなぐ細い糸のように、亡くなった人の気配はふとした拍子に胸の底で揺れる。季節の変わり目のにおい、朝の光の角度、湯気の立つ茶碗の重み。そのどれもが、故人の不在をそっと撫でていく。思い出は過去に属しているはずなのに、いま私の呼吸の中にまで入り込み、未来へ向かう足取りに影を落とす。けれどその影は暗いだけのものではない。故人の生きていた証が、私の中で静かに形を変え続けているのだと思う。

 《水音がいつもわたしの中にある》という(私の)句が、ふいに胸の奥で響く。「水になるとは死ぬことだ」と、あなたは笑いながら言っていた。形をもたず、掬えばこぼれ、しかし流れ続ける。あなたはもう私が触れることのできないところへ行ったのに、その水音だけは私の内側で絶えずさざめいている。過去のあなたが落とした一滴が、いま私の心に波紋を広げ未来の私の歩みにまで届いていく。

 追憶とは時間を逆行することではなく、いまに至る時間を貫く細い水脈のようなもの。過去のあなたはいまの私の中で生き、未来へ私をそっと押し出す。あなたが水になったのなら、私はその水を抱えたまま歩いていく。こぼしそうになりながらも、こぼれた分だけ世界が潤うかもしれないと。

 あなたを想うたび、胸の奥でまた水音がする。あなたがいなくなった世界で、それでも私が生きていくための静かな道しるべのように。

ポストする LINEで送る ブックマーク
❤️ ひざポン
ありがとう!

気軽にポチっと
どうぞ(無記名)

3月の予定 3月   8日(日)(番傘フェスタ2026) 3月10日(火)川柳マガジンクラブ奈良句会3月句会(川柳マガジンクラブ和歌山句会発足のごあいさつ) 3月17日(火)名草川柳会 3月25日(水... 「⦅3796⦆3月の予定(川柳関係)」の続きを読む
  川柳マガジンクラブ和歌山句会2月句会終了後の“おしゃべりたいむ”です。 雨模様でしたが、出席者12名中の8名で17時頃まで歓談しました。句会報告は、中央に座っておられる世話人の井口廣司さんがブログ... 「⦅3795⦆川柳マガジンクラブ和歌山句会2月句会」の続きを読む
 下記、川柳マガジンクラブBlogから記事をお借りしました。 令和8年2月19日(木)  神戸市立婦人会館 4F「もくれん」 出席者・・・・浜  知子  たむらあきこ 小池桔理子      千足 ... 「⦅3794⦆第150回川柳マガジンクラブ神戸句会2月句会‥《抱くための両手つかんでいる虚空》」の続きを読む
(^v^)/ 名草川柳会(第31回勉強会) 2026/2/17(火) 大野風柳(おおの・ふうりゅう)師の7句。 (一社)全日本川柳協会会長、柳都川柳社主幹として20歳(1948年)から70余年にわたり... 「⦅3793⦆名草川柳会(第31回勉強会)」の続きを読む
 私は、若い頃からずっと高価な宝石にも着飾ることにも関心がなかった。私の言う“快楽”とは、したがってそういう種類のものではない。言うなら、「たましいの快楽」。その快楽は、身体の感覚や一時的な刺激とは異... 「⦅3792⦆“快楽”とは何か」の続きを読む
     一冊目は、『たむらあきこピースボート地球一周吟行500句 壱 ― 恋 それから ―』。 二冊目は、『たむらあきこピースボート地球一周吟行500句 弐 ― 曳航されている ―』。  作品のテ... 「⦅3791⦆やっと…創刊300号記念(新葉館出版)の句集原稿送付」の続きを読む
Copyright All rights reserved. SHINYOKAN PUBLISHING illustration by Nakaoka.K