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(令和2年4月15日記)
新型コロナウィルス感染症について
――本稿”『西暦2000年の地球』”に入る前に――

 感染が広がる新型コロナウィルスに対し、外出自粛などの防止策を何も行わなければ、流行開始から収束までに、人工呼吸を必要とする重篤な状態になる人が15~64歳で約20万人、65歳以上で約65万人に上る恐れがあるとの推計が公表されました。その49%の約42万人が死亡するとされる試算を示されたのは、厚生労働省のクラスター(感染者集団)対策班の西浦博北海道大学教授です。
 今から40年前のカーター大統領への報告書、訳書名『西暦2000年の地球』には、50万~200万種(しゅ)の絶滅が予測されていました。ヒトも犬もそれぞれの種(species)に属しているように、地球にどれほどの生物種が存在してきたのか、そのうち産業革命以来今日までどれほどの生物種を絶滅させてきたのか、どこにも正確な調査研究はありません。ただ『西暦2000年の地球』のレポートは40年前のものとは言え、今まで推計されたどの資料よりも膨大で精確なものです。生物種は必ず隣合う生物種とともに生きています。食物連鎖(しょくもつれんさ、food chain)もそのひとつです。したがって仮に100万種の生物(目に見えない細菌なども含めて)がヒトの近くから消えているとしたら、そこに今までとは異なる生物環境が出現している、あるいは出現しつつあると考えるのは自然です。
 中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラ出血熱などは動物由来感染症として記憶に新しいものですが、それらの隣には、細菌や寄生虫など数えきれない生物が生きています。それらのすべてがかつてどのような環境下で、絶対的ではないにしろ、安定を保っていたのか今では永遠の不明事項になってしまいましたが、新型コロナウィルスがヒトにとって最も手強い生物であるという保証はどこにもありません。むしろ、今後どのように変異するのか、といった近未来の不安も深刻です。このウィルスを完全に撲滅することはできませんし、またその営みによってどのような新興感染症のウィルスが生まれて来るかも予測できません。
 浮足立った言論ばかりが目に付く日々ですが、4月16日の近藤誠一氏(元文化庁長官)の「正論」・『感染症と共生する知恵の蓄積を』(産経新聞)は、文字通り正論と思われます。その末尾から。

 文明の力で感染症をねじ伏せようとするだけでは問題は解決しない。戦いはエスカレートし、パニックが人類を自滅に追い込むだけだ。文明や人類への過信を反省し、ウィルスと共生する知恵を蓄積することこそが賢い道なのだ。

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