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 うたた寝から覚めたのは15時頃。身を横たえたまま、すこし以前のことの回想に耽る。知人の自死や、孤独死という死のかたちがいつまでも脳裡を去らない。ゆるやかな時間の続きにわたしの死もあることを、ぼんやりと考える。それまでにしておかなければならないことのいくつかも考える。人生は、夢を生きているようなものなのだ。
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(たむらあきこ川柳集 2010年から)
   環状線             たむらあきこ
一人称ばかりがせめぎあうコップ
半径をのばして夢とすれちがう
羊水を出てからさがす自由席
現在地どこかがいつもわからない
止まってはいないわたしのなかの水

少しずつ零れるもののある器
芽キャベツよきみが守っているこころ
喧騒をはなれてわたくしに潜る
蝸牛わたしが這ってきた時間
過去未来無限のうちの蝉しぐれ

遠ざかるほどにきれいになってくる
カスミソウの白を侮ってはならぬ
汗腺がゆるんで昼の底にいる
私にはぐれる私の森で
いつも何か足りずに指を折っている

月光に任すわたしという冬野
帆船の孤独ゆめばかりを食べて
すこしずつ色を減らして生きている
半眼で欲ふかきことかんがえる
転生の途中ですするかき氷

忘却を入れる大甕もっている
たましいへ視線合わせにくる人形
遮断機の向こうはきっとわらべ歌
いつからかたったひとりの時計持つ
官能が悦ぶように生きている

白を出て白に還ってゆく命
空缶をいつも宥めて生きている
さみしくて毀れはじめる石仏
あいまいを許さぬ針が錆びている
枠のない空気たんぽぽからもらう

ひとりきりの祭りのように爪を切る
こめかみのあたりに非常口がある
だんだんと目を毟(むし)られる深海魚
回るしかなくて環状線の鬱

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環状線…夢を生きている”にコメントをどうぞ

  1. 田村ひろ子 on 2013年5月16日 at 8:52 PM :

    たむらあきこ様
    「環状線」の作品のご披露ありがとうございました。

    半径をのばして夢とすれちがう
    遠ざかるほどにきれいになってくる
    私にはぐれる私の森で
    いつからかたったひとりの時計持つ
    白を出て白に還ってゆく命
    回るしかなくて環状線の鬱

    今夜はこの六句がズンと響きました。
    ご自分を多方面からご覧になることができるのですね。

     嶋澤喜八郎氏の作品のご紹介もありがとうございました。
    あきこさんのブログのお蔭で色々なことに向き合うことが出来ます。感謝しております。

    • あきこ on 2013年5月16日 at 9:21 PM :

      田村ひろ子さま
      ありがとうございます。
      だんだん自分の句の欠点が見えてきまして、次の川柳集の句を選ぶのに苦労しています。
      やはり、選者ですよね。この方に採っていただいたら安心、という方を追いかけていたようなところがあります。時実新子先生がお元気なうちに、わたしも先生の選を受けたかったなあ、といまにして思います。
      ではまた。お薦めの大会があれば、教えて下さい。

  2. 伊東志乃 on 2013年5月16日 at 11:06 PM :

    あきこさま、こんばんは(^^)

    転生の途中ですするかき氷
    羊水を出てからさがす自由席
    いつからかたったひとりの時計持つ
    すこしずつ色を減らして生きている

    今の私の心情にピッタリです~~~♪♪♪ありがとうございます(^^)

    「人生は、夢を生きているようなものなのだ」
    まさしくそうですね(^^)でも、どの様な夢なのか………幸せなのか、悪夢なのか………(^^;)

    • あきこ on 2013年5月16日 at 11:40 PM :

      伊東志乃さま
      夢ですから、終わってしまえば幸も不幸もないかも。
      川柳に走り回っている間も、夢の中にいるようです。何百回も大阪、京都ほかに出かけても、どこか記憶もあまりなくて。(作句に没頭しているからか)
      川柳行脚、いまはこれができることを幸せとして生きています。

  3. りょーみさすけ on 2013年5月17日 at 9:51 AM :

    投句の選を終えた時実新子さんに、次のようなことばがあります。
    「もっと話したい、話したかった句に、心を残しながら閉ざす私のドアです。次回も強くノックして下さい。お待ちしております」
     _(. ・)θ☆(°°) アタックチャンス!

    ―「人生は未知との漂泊である」(三木清)

    • あきこ on 2013年5月17日 at 6:28 PM :

      りょーみさすけさま
      いつもながら、すばらしい箴言の引用をありがとう。(^^)
      >「人生は未知との漂泊である」(三木清)
      そういうことだなあ、と。「漂泊」のこころで、明日も富山まで、ひたすら句を詠みに走ります。

  4. 竹内いそこ on 2013年5月17日 at 9:49 PM :

     句を詠む とはなかなかに苦行。
    始めた頃はそんなこと考えませんでした。
    心にあるものを治めてくれる器が17文字で、すんなりとどんどん作れたような気がしていました。
     作れなくなったのはいつからだったのか。
    名句に出合って、こういう句をつくりたいと思った時なのか、
    自分の形はこうではない と気付いたときなのかもしれません。
     それでもやっぱり指を折っているのです。作ることが自分を確認する作業だから。

     あきこさんの今回の作品にでてくる色は白のみ。
    未来予想図の夢ではなくて、レム睡眠に閉じ込められた記憶の句集だったのでしょうか。

    • あきこ on 2013年5月17日 at 11:16 PM :

      竹内いそこさま
      びっくりしました。そういえば白だけですね。
      明日あさって、どうぞよろしく。
      13時少し前にサンダーバードで富山駅に到着。
      楽しみにしています。(^^)

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