靖國神社宮司であった小堀邦夫氏が、就任後間もなく辞職する切掛となった内部研修会での発言の真意、その経緯と背景について纏め、問題提起を意図した小冊子です。また、参考資料として週刊新潮、月間Hanada、新聞報道、神社新報論説、文藝春秋手記などが収録されており、最後に前宮司による他の著作から天皇と稲作についての解説を抜粋が掲載されています。
内容は3つあって、一点目は神道の考え方や手続きの観点に基づいた靖國神社の運営に対する批判と改革の提言です。興味深いのは、この点ついては前宮司とは立場や見解を異にする「靖國神社の真実」と共通する傾向があることでした。第二点は前宮司の辞職の直接の切掛となった今上陛下の「巡礼の旅」に対する見解ですが、これは第三点の天皇と靖国神社の関係と密接な関係にあります。「巡礼の旅」という行幸は慰霊祭ではないこと、昭和天皇の御親拝が途絶えた経緯についてマスメディアは別のことと関連づけようとしてきたことがよく分かりました。
自らの過失を認めた上で事実関係を正確に知ってもらいたい、靖國神社の運営をよりよくしたいという真摯なこころが伝わって来ましたが、どうやら前宮司は戦う相手と方法を間違えてしまったようです。天皇の公務と祭祀の関係を改めて取り沙汰しなければならなくなった原因がどこにあるかは言うまでもないことです。重要な論点が指摘されている資料という意味で星5といたします。