採らせていただいた全句を書き出してみた。今回の秀句《流されているとは知らぬちぎれ雲》の「ちぎれ雲」は自身を含めた〈にんげん〉の暗喩。ふだん意識しているわけではないが、われわれは宇宙の時間軸の瞬時を流れ合っている。ひとりで生きていると思っていても、われわれは何か大きな存在の一部なのである。この句には、人間存在への、孤独感でもない大きな視点を感じる。「ちぎれ雲」のように、その何かに身を任せてみようではないか。
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第3回 橿原市民川柳大会 誌上大会・「流れる」たむらあきこ選
何故だろう流れる雲に泣けてくる 牧本 誠也
流されていません流れているのです 笹倉 良一
濁流も清流もみな動いてる 毎熊伊佐男
源流の気概忘れて海に入る 稲葉 岩明
懐メロの流れに浸る深夜便 長谷川崇明
歳月の流れスマホが手離せぬ 鈴木さゑ子
水に流せとあなたはそれで気が済むの 靍田 寿子
嚙み合わぬ空気流れる虚しさよ 小井 和子
会議室黙っていると流される 冨川 章
根回しが効かずすんなり流れない 橋倉久美子
腑に落ちぬ流れの中に座している 木村 利春
折り合いがついたか空気動きだす 津田 照子
子を叱る母さん先に泣いている 河合 守
反抗する娘と同じ血が流れ 井岡 邦子
点滴の雫いのちの音がする 上原 稔
今日という川を流れてゆく命 三宅 保州
それぞれの速さで流れゆく途中 居谷真理子
流れ藻の家族ごっこもあと少し 桑原すゞ代
許せないものを抱えてもう汽水 平井美智子
コロナ禍の街を流れている妖気 新家 完司
タップするとアマゾン流れだした箱 岡田 幸子
匿名を流すラジオに顔がない 徳重美恵子
プラゴミもフェイクニュースも河口へと 北村 幸子
回転寿司鯛も平目もながれてる 西澤 知子
人間のエゴを流しているヘドロ 福井 靖訓
ふるさとの川が流れている背骨 藤村とうそん
流木のいっぽんでした以下余白 堀口 雅乃
明日は明日流れる風はどんな色 浦﨑 静子
思い出す思い出したくない月日 石谷 恵子
句読点打って流れを変えてみる 浅野 忍
ベネチアングラスと過ぎてゆく時間 赤松ますみ
悲しみをファドの調べに乗せてみる 赤松ますみ
レコードの溝からひばり唄いだす 神田 良子
募集中一緒に流れてくれる人 羽城 裕子
じゃぶじゃぶと渡ってみたい天の川 三浦モナカ
天の川流れて行ったのは男 森中惠美子
血液の流れ狂わす悩み事 田中 重忠
流されるままに流れた人の川 中村 惠
蛇行する川よわたしの生き様よ 小山 紀乃
足裏の流砂よ夢はついえたか 坂本きりり
流されぬようにカギカッコでくくる 森田 律子
放浪の雲には雲の不文律 石田 孝純
逃げ水に母の声する八月忌 前中 知栄
横切ったのは鴨長明だったのか 市井 美晴
アバンギャルド俺に流れる血のことか 石橋 芳山
流れ出した適当という器から 下小牧真理子
激流のように頬ずりしてもらう 新保 芳明
まんまるな目をして桃を待っている 浜野みさえ
秀句
流されているとは知らぬちぎれ雲 竹村紀の治
軸吟
蝉の時間にふいにきのうがながれ着く たむらあきこ
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