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 五省(ごせい)とは、海軍兵学校において用いられた五つの訓戒のことなのね。

一、至誠(しせい)に悖(もと)る勿(な)かりしか
‥真心に反する点はなかったか
一、言行(げんこう)に恥(は)づる勿(な)かりしか
‥言動に恥ずかしい点はなかったか
一、氣力(きりょく)に缺(か)くる勿(な)かりしか
‥精神力は十分であったか
一、努力(どりょく)に憾(うら)み勿(な)かりしか
‥十分に努力したか
一、不精(ぶしょう)に亘(わた)る勿(な)かりしか
‥最後まで十分に取り組んだか

 上記の五省が海軍兵学校校舎に掲げられるようになったのは、軍国主義的色合いが濃くなり始めた1932年からのことだとか。文語調箇条書きの五省を生徒に唱和させるようになったのね。前田先生は、この五省のことを瓦版誌の巻頭言にも書いておられるが、姿勢を正してそのことを話されることもあった。先生の芯には五省が沁み通っておられるように見受けられたのね。

 外国人観光客が日本に来て驚くことに、「忘れ物(落とし物)が返ってくる」「時間を守る」「清潔」「順番を守る」「親切でやさしい」「礼儀正しい」などがあるらしい。これらの一つ一つをよく見ると、自分のことより他人のことを考えてする行動だと思うのね。日本人は、これらの行動や習慣をとくに誇りに感じていない。国内にあってはほぼ当たり前のことだから、分からないのね。外国人とかかわって初めて、これらが当たり前でないことに気づくのである。

 経済格差のような比較で得られる横軸の優越感(もしくは劣等感)はむなしい。たとえば日本には伝統的に “清貧の思想” のような考え方があり、貧しいことを恥とはしない文化があったではないかと。ほか目に見えない縦軸の日本人としての生き方や誇りを、より自覚的に取り戻すこともたいせつなのではないかと思うのね。

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