「難解句鑑賞 №003」(川柳マガジン11月号から転載 執筆:たむらあきこ)
今日の位置アバンチュールの中にある 高橋みっちょ
「アバンチュール」は〈冒険〉を意味するフランス語。「(恋の)冒険」を指すことも。この句では、その意だろうか。結婚していて家庭があるからこその「アバンチュール」。もう少し言えばたかが「アバンチュール」ほどの恋。それを恋と呼ぶかどうかはさておき。たとえその辺に転がっている浮気程度のことだとしても、大いに生きがいを貰っているのかもしれない。「今日の位置」なのだから、作者はいま恋の真っ最中ということなのだろう。
汚れてたかもしれないモナリザの足 岡田千加子
『モナ・リザ』は、イタリアの美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた油彩画。上半身のみが描かれた女性の肖像画で、世界でもっとも知られる作品。現在はフランスの国有財産であり、パリのルーヴル美術館が常設展示をしている。しばしば〈謎〉と表現される画面構成、だまし絵めいた雰囲気など、さまざまな点において斬新だったこの作品は、現在に至るまで人々を魅了し続けてきた。見えていない「足」に関しても、この句のようにどうにでも想像させる不思議さがある。
「
」 佐藤 健二
抽象的な芸術作品などで、〈無題〉というタイトルを見かけることがときどきある。〈無題〉とすると作品のイメージを固定化させない。受け手側の想像に委ねることができるのである。正式なタイトルとして、〈無題〉は川柳作品にもごく稀に見かけられる。この「 」も同様の作者の意図なのだろう。タイトルではなく、川柳作品そのものであることに少々の違和感がなくもないが。文芸川柳にどういう表現があってもいいと考えている。特異ではあるが、こういう〈句〉もあっていい。
蟻地獄に蟻を入れるのやめようよ 吉本 桂香
蟻地獄の体長は約1cmほどで、小さな身体には自身の頭部よりも巨大な鎌状の大顎が付いている。サラサラした崩れやすい砂地を見つけるとすり鉢状の穴を掘る。最深部に潜み、落ちてきたアリやダンゴムシなどの昆虫を捕らえる。大顎を作って獲物を固定し、消化液を注入する。獲物の体組織を液体状に分解し吸汁するとか。
その残酷を残酷とも思わずに遊んでいる幼児。倫理や道徳などからは完全に自由だから、罪の意識もない。残酷にして無垢という、どうしようもない次元にいる。振り返って現代社会を見ると、子どもの世界のみならず大人の世界にまで蔓延るイジメ。相手の痛みを想像しない、できない社会をどうにか変えていきたいものだと。
曲がらねば愛の浮遊を握れない 久保内あつ子
繰り返し読んではみたが、かなりの難解句。移ろい易い自他の「愛」をしっかりつなぎとめ、固定しておくためには自身が「曲がらねば」ならないということか。ことばの選択にいささか無理があるのかも知れない。「曲がらねば」をどう読むかが、鍵。
曇天にたたむ一枚光るもの 句 の 一
「曇天」は、作者のこころの「曇天」。たいせつな「光るもの」でも、いまは畳まざるを得ないと。こころに翳りのあるときとはそんなもの。こころの微妙な襞を詠んだ心象句。
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