「角川短歌」11月号はまだ読みはじめたばかり。(時間がないのね) 選考経過について各選考委員が意見を述べあう「選考座談会」、メンバーは伊藤一彦、永田和宏、小池 光、東 直子の四氏だが、なかなか面白い。この作品が選ばれたことについては、読者からかなりの賛否両論があるような気もするが。下記は、「第65回 角川短歌賞」受賞者(今回受賞者は二人)の受賞50首のうち、初めの10首。ご参考まで。
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季の風 田中 道孝
故障したタワークレーンにのぼりゆく上がれば 白き春の底見ゆ
陽のあたるクレーンのよこで飯食えば雲雀が空を押し上げている
ごめんごめん俺のでんわは糸電話 鳩がとまると通じへんねん
コンクリートの土間にたまりし春の水 羽ふくらませ声が声呼ぶ
くつしたの穴がほほえむはるのひにおかげさまでと手紙がとどく
紋黄蝶 足場シートに沿いながら吹き上げる風にのぼりゆきたり
カップ麺に茂吉秀歌をふたにして鵯(ひよどり)が来るベンチに座る
花水木に顔を撫でられ組み上げる丸太足場に白い陽が差す
スコップを洗う土工が見上ぐれば日射しをくぐりつばくらめ来る
てのひらで水のうえからすくいあげ息をかければ風にただよう
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下記は「第65回 角川短歌賞」受賞作「季の風」(田中 道孝氏)への選考委員それぞれの講評(誌面、一部)、ご参考まで。(あきこは、短詩型文芸は一つだと思っているのね。短歌も面白いよ)
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季の風(小池◎ 伊藤〇 永田〇)
小池 この歌は、三十一篇の応募作品の中に一篇だけ違うものが混じっていたという感じ。どう違うかというと、歌のできる場面の背景がきわめてよくわかって、高所作業者がクレーンか何かに乗って運転している。わかりやすく真っ直ぐ平明に作り上げるというオーソドックスな歌で、わからない歌が一首もない。一つ一つが単なる生活詠、労働詠というだけでなく、非常にうまく歌になっている。一首目〈故障したタワークレーンにのぼりゆく上がれば 白き春の底見ゆ〉、クレーンが故障して、地上何十メートル登っていくんだろうね。そして下を見下ろしたら「春の底見ゆ」という詩的な言葉につないでいる。二首目〈陽のあたるクレーンのよこで飯食えば雲雀が空を押し上げている〉。高所でお昼にお弁当を食べていると、雲雀が上ってくる。ああそうなのかという感じがしてとてもいい。感心したのは七首目〈カップ麺に茂吉秀歌をふたにして鵯(ひよどり)が来るベンチに座る〉。カップ麺はふたをしないと撥ね上がる。お湯を差して、その上に何か置くんだけど……。
永田 『茂吉秀歌』を(笑)。
小池 佐藤佐太郎の岩波新書ですね。出来過ぎているけど、『茂吉秀歌』をふたにしてお昼のカップ麺食っている労働者という非常に魅力的な一面を感じさせる。そういう歌が最後まで続いていて、短歌ってこういうものでいいのではないかという気がして、今までの角川短歌賞の流れとは違うけど、これを推すしかないと今日は来ました。私しか入れないだろうと思ったら、永田さん伊藤さんも〇でしたね。
伊藤 読んでいて本当にすっと心の中に入ってくる。失敗作がない。そういう点では十分に〇を付ける。多分小池さんが喜ぶ歌じゃないかと思いながら読みました。四首目〈コンクリートの土間にたまりし春の水 羽ふくらませ声が声呼ぶ〉。鳥と言ってないけど、「羽ふくらませ声が声呼ぶ」は捉え方として斬新なものがある。八首目〈花水木に顔を撫でられ組み上げる丸太足場に白い陽が差す〉。花水木の大きな木があって、そこに足場を作っている。花水木という具体的な植物詠が出てくるのもいい。…
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