※2月いっぱいで抄出を終えるため、急いでいます。平成8年分はこれで終わりです。
『前田咲二遺句集 平成8年』【26】
人の名が脳のすきまにからみつき
家計簿の小さな嘘は許される
ぼくのくすりコーナーがある冷蔵庫
やーめた 鬼が探しにこないから
ひとりの部屋で夜を一枚ずつ剥がす
直立不動の姿勢で並ぶ兵の墓
楢山で再会それもいいですね
贋作のどこが違うといわれても
大物の蟻が寄り道ばかりする
七十の背筋を正す男坂
丸腰の余生 妻にも逆らわず
ハイハイと聞くタクシーの御高説
残りどれほどですかわたしの持ち時間
残り火がぼくにわるさをして困る
ひょっとことおかめの面にある情け
顔もおもろいがしゃべりも面白い
天は二物を字はうまいのに下手な文
美しい尾ひれ噂へ添えてやる
火傷してもいいならわたくしをどうぞ
末裔の蔵で眠っていた歴史
方向音痴ですぐ人妻と手をつなぐ
じゃじゃ馬を馴らす奇策はおまへんか
あんたの顔を見ていると寒くなる
定年後 妻の助走がはずみ出す
田も畑も無くした亡父の四季報だ
ほっておけそのうち飽いてくるだろう
枕の下で重ねた罪が騒ぎ出す
ロボットよお前もいつか余り出す
女の嘘へ嘘を重ねるのも愛か
これが最後の求愛を舞うあばら骨
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