※2月いっぱいで抄出を終えるため、急いでいます。川柳には、当然フィクションも入る。何通りもの人物になり、また動植物にもなって詠む。すぐれた川柳は一篇の掌編小説にまさることもあるでしょう。その中に作者のたましいや叫びや願いが込められてくる、そうしたもの。
『前田咲二遺句集 平成7年』⓰
えべっさんらしい寒さになってきた
年金ぐらしに餅が少少あればいい
京橋で会おうと呑んべえから賀状
七階までそばの出前と乗り合わす
橋渡るまでは確かにあった虹
七転びの次は八起きと限らない
橋ひとつ渡ってひとつ夢が消え
シャネルふりかけてわたしが出来上る
あくび嚙み殺しあなたに従いてゆく
生きているように化粧をしてもらい
毀誉褒貶 流すシャワーを入念に
妻の形状記憶にぼくが淡くなる
飢えの記憶も天皇制も遠くなる
師匠の横顔にきびしい道がある
千体の仏を彫ってまだ迷う
仏像を彫る亡父となる亡母となる
風邪ひいてまんねと青い貌でくる
アンテナの数では妻に負けている
静やがて動へと変わる兵馬俑
ぼくをかばう亡母が記憶の底にある
額だけの方が値打ちがありそうだ
籤売り場までジンクスの道がある
旅も女も賞味期限が切れてくる
もっと値切るんやったあっさり負けはった
掌にのせただけで目方を言い当てる
電話を下さいわたしも月もひとりです
まっ先に悪友が駆けつけてくれ
旅ひとり 砂ほろほろと刻を消す
さくらほろほろ 歳月という免罪符
妻ともうワルツを踊ることはない
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