※2月いっぱいで抄出を終えるため、急いでいます。わたしはほぼ八十代の先生しか知りません。六十代後半(先生は1926年生まれ)の句を抜き出していると、若々しい姿が立ちあがってまいります。亡父と同年齢ということで、ものの考え方などに似通ったところが無きにしも非ず。
『前田咲二遺句集 平成6年』⓫
白い杖なんどもぬくい声に逢う
傷心の肩を離れぬじゅうしまつ
火のような声よ 恋する鳥たちよ
たたき上げの社長で人をそらさない
苦労などしてませんよと苦労人
拝まれる石も踏まれる石も 運
百円店でジョークを一つ買ってくる
B面の恋とはそんなものですか
営業用微笑カバンに詰めてある
蓬髪の男に運が向いてくる
三十八度線に解けない雪がある
楢山のわたしの雪も解けますか
簡単に下げる頭を信じない
頭を少し下げて不況をやりすごす
土を練る土のこころを追いつづけ
人形の傷みはわたくしの痛み
この秋の菊を気遣う人形師
愛の匙加減がむずかしいあなた
ライバルが上手に死んだふりをする
高齢者向きの処方であしらわれ
だいじょうぶですか連休長すぎる
割れ鍋の蓋が新しすぎないか
なによりも妻の笑顔が痛かった
こっちの水も苦いと知っている蛍
同じ広さの隣が二千万値下げ
先に死ぬのは夫ときめている保険
修羅物の顔すさまじや薪能
寝屋川の芦屋と呼ばれ坂に泣く
異人坂のぼって肉のうまい店
闘わぬ男が苦い酒を飲む
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