※時間がないので、少々急いでまいります。
『前田咲二遺句集 平成14年』【33】
謝っているのにドアが開かない
切り取り線の上を歩いているふたり
ひとり奈良坂ふと田楽のうまい店
満月の夜が一番 淋しくなる
明日香路にほけたお顔の仏たち
老母への文 噛み砕き噛み砕き
拉致無残 ハングル文字の着く渚
鉄削る音も寂しくなった町
哄笑のように中座が燃え上がり
大正の骨が妥協を許さない
ゴキブリも亭主も思いっきり叩く
雄を食う虫の世界にあるヒント
おくびにも強さを見せぬ生き上手
11桁つけて庶民を並ばせる
戦争を知る番号の傷だらけ
写真集こっそり見てる紙おむつ
カマキリの雄の形で死んでいる
保険金受取人がきなくさい
いつまでも子に頼られている甘さ
格式が違う新地の請求書
天国の二人の女から誘い
人生が始まっている玩具箱
裏の裏読んで誘いにのってやる
人生の半分ほどは酔うている
何を書くわけでもないが墨を擦る
お湯割りのくすぐり効いてきたようだ
水槽の黒い金魚はぼくだろう
仮縫いのままで女を泳がせる
干し草の匂いに遠い罪がある
俎の鯉が薄目を開けている
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