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前田咲二遺句集 平成11年』❿
流木を拾って塩を焚いた日よ
妻がぼくを呼び捨てにするときがある
盛り塩の白さが客を呼んでいる
天国でつける仮面を選っている
絞首台へ上る背中は本物だ
横道にそれると見えるかぜの彩
底の底あたりで神と手をつなぐ
陽を信じ土を信じて種を蒔く
愛告げてからの空気がぎこちない
もうそろそろ作り笑いはやめにする

笑わない男につもる薄埃
貧乏神が眠っていますお静かに
犬も猿も雉子もパートに切り換える
輪の中がわかりはじめたランドセル
入場無料というからとりあえず並ぶ
阿呆らしい話 気長に聞いてやる
人柄がふわりと句碑の字に遊ぶ
欲すてて大きな欲が見えてくる
わだかまりほどくことばを積んでいる
ニンゲンの毒が一番恐ろしい

わたくしの干潟が満ちるまで遊ぶ
パンの臍 壷井栄を読んでいる
糸を引くような流し目に逢った
相づちを打つたび傷が深くなる
ダンボールの中がオアシスかも知れぬ
子は親を選べぬという不遜だな
男ひとりの埃を掃除機に溜める
生命線の薄い手と手を繋ぎ合う
停年の支線で自分とり戻す
自分史に嵐をからめ火をからめ

あれ以来 箱は小さい方を取る
補聴器にぼくの朧が棲んでいる
もう嘘はないかと顔をのぞかれる
ホップステップまでの人生だったなあ
三次予選あたりで背中痒くなる
転ぶのは仏の膝と決めている
短針もぼくもあくせくなどしない
天才の心はいつも濡れている
水鏡ははのこころが見えてくる
傾いた愛は追わないことにする

妻のシュレッダーにいつかはかけられる
本当の敵は決して逆らわぬ
真っ直ぐに泳ぐと味方いなくなる
何もしなくても一日は二十四時
友達を数えて石に蹴つまずく
クーラーのかぜストレスを吐いている
人間の哀しさ人の裏を読む
君が代のおさらいをする日教組
かわるがわる裏を覗いてゆく他人
ありがとうと確かに言った骨の壺

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手のなかに師・前田咲二❿‥《わたくしの干潟が満ちるまで遊ぶ》(前田 咲二)”にコメントをどうぞ

  1. 前川奬 on 2018年10月18日 at 9:37 AM :

    たむらあきこ様
    前田咲二遺句集❾❿拝読。有難うございます。
    毎回の挿絵代わりの写真、いいですね。
     
    神米のわたしの興味を引いたのは次の句です。

    不審船へ当たらぬように弾丸を撃つ
    騙し絵の中にかくれているわたし
    一枚のハガキと響くものがある
    自販機にシワを伸ばせと叱られる
    二で割った余りは妻が持っていく

    人柄がふわりと句碑の字に遊ぶ
    わたくしの干潟が満ちるまで遊ぶ
    自分史に嵐をからめ火をからめ
    ホップステップまでの人生だったなあ
    水鏡ははのこころが見えてくる
    人間の哀しさ人の裏を読む

    前川奬

  2. たむら あきこ on 2018年10月18日 at 10:09 AM :

    前川奬さま
    毎回のように句を書き出してくださってありがとうございます。
    人間の幅の広い先生だったので、句も幅広く詠んでおられます。
    そこから、どれを抜き出すかは悩ましいところで。
    ここからの十年はあぶらののった最盛期の句が出てくるでしょうし。
    責任を感じています。
    続けて、どうぞよろしく。(__)

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