【選評】
山頭火句集『草木塔』の中につぎの〈さくら〉の句がある。《いつとなくさくらが咲いて逢うてはわかれる》《あすはかへらうさくらちるちつてくる》。日本人にとって“国花”とも言える桜。なぜ日本人は桜に惹かれるのか。
現象世界のすべてのものはとどまることなく常に変移している。日本人が桜を愛でてやまないのは、そこに無常を感じるから。日本人の多くは移ろいゆくものに美を感じる傾向を持っている。〈無常観〉は、日本人の美意識の特徴の一つと言ってよい。自然と対立せず、朽ち果てゆくものへの共感。
《誤解とくさくら吹雪の下で解く》は、句の中に〈さくら〉を詠んで一読こころに届いた句。「さくら吹雪の下」が、今わの際の場景の暗喩ではないかと想像するのである。死にゆく人の枕もとで長い間の「誤解」がとけたのではなかったか。これで思い残すことなく見送り、また逝けるのである。一句の中に物語がある。上記の〈無常観〉とともに読む者のこころに響いてくるのである。
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