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前月号近詠鑑賞
振り返らない蝸牛                      たむらあきこ
カタツムリ2父と子のすき間へ妻の声がする 橋本 恭治
   「子」は息子だろうか。「父」は作者。仕事であまり関われなかったせいか、どうしても父子の間には「すき間」が出来る。そんな時「妻」は双方の接着剤の役割を果たす。
言い分はあるが握手で片づける 山本 鈴花
   大概のことは〈和〉にもっていこうとするのが普通の大人の対応。「握手」はなんとか早く折り合いを付けたいという作者の願望。
シャッター通り頑張っている金物屋 石崎 金矢
  そう言われればそうかも。「金物」はコンスタントに需要があるだろうし、流行り廃りもないことから不況でもなんとか頑張っていられるのだろう。
子の手紙習字ならった甲斐が無い 水野リン子
   子どもの頃に習わせた「習字」。珍しく「子」がくれた「手紙」の悪筆に嘆息。それでも嬉しいのが親心というもの。
手のひらの豆腐は覚悟出来ている 浦野知三郎
   切り分けられる前の「(手のひらの)豆腐」の少し緊張感のあるような四角い佇まい。
菊枕邪気多すぎて払えない 山本 佳子
   「菊枕」は、陰干しで乾かした菊の花びらを中に入れた枕。「邪気」を払い、頭痛を治すといわれる。「邪気多すぎて払えない」と自身を笑う作者。
今もって解らぬものに妻がある 加藤 三笑
  〈女〉とは〈妻〉とは。男にとっては永遠の謎であるらしい。
誰よりも一番わからない自分 鬼頭しず江
   「自分」は何者なのか。一番分かっているはずの自分の心すら捉えがたいのが人間というもの。
長生きの遺伝子信じ遺書を書く 松本トシ子
   自家撞着。作者の「遺書」はまだポーズの域なのだろう。死ぬような気がしていない。
切り札を持って話をつけに来る 川田 尚代
   「切り札」がなくては話し合っても決裂が見えている。互いに言いたいことの応酬になるだけ。
血の流れスムーズにする褒めことば 前田江律子
   「褒めことば」についニヤリとしてしまう人を嗤ってはいけない。「優しい人ね」と褒められると本当に優しくなったり、「時間を守れる人よね」と褒められると時間を守る人になるという。このように褒められて言動が変わることをラベリング効果というらしい。
ポケモンに誘い出された引きこもり 市川  博
   流行りのポケモンGO。家族にとっては困った「引きこもり」だが、彼(彼女)を外に連れ出してくれるという意外な効用(?)があった。
揉みほぐし叩きほぐして立たす足 田鎖 市子
   いつか誰にでも訪れる〈老い〉。こういう句を他人事とは思えない日がきっと来る。
知らぬ間に虫の音秋を連れて来る 梅田 恭子
   「(秋を)連れて来る」がよい。「(虫の)音」が主語。擬人法。
来た道は振り返らない蝸牛 田岡 修二
   ゆっくり堅実に歩んできた「道」。「振り返らない」のは作者の人生の歩き方。「蝸牛」である自身への自負。                     (川柳瓦版の会)

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