5月17日
たしかにそうだねと潰されそうになる
きみといるデッキに萎える 疎外感
ないものねだりきみに傾く
きみの寡黙はひらきなおっているらしい
まだ起点でもない 刷り込まれていない
ムダかどうかはそのうちに分かりだす
このいまの波が記憶にきざまれる
置き換える 試行錯誤がおわらない
踏んでいることに気づかぬまま 無言
躓いた声がときどき渇きだす
くり返すあとに引けないこととして
夜の帳(とばり)のとばりがわかる夜の海
わたしを縛ってきたのは私なのだろう
5月18日
船酔いのような違和感 目を覚ます
他人(ひと)ごとでない孤独死が視野に入る
たゆたっているのはくり返す時間
間延びしたわたしを海水に漬ける
気分転換へあなたについてゆく
切れて穴が開くまで本音ぶつけ合い
すこし似るあなたの森がうとましい
反発の時間も入れてゆだねあう
地鳴りのようなせつなさ逝った影といる
この世にはいないと思い知りながら
その間(ま)にもすこし目に入る波がしら
あの日のこと悔いていないと言いつのる
5月21日
すこしきみに立ち入る追いつめる 隘路
捨ててきたいくばく背負いきれぬもの
どの抽斗(ひきだし)からもきのうが顔をだす
わたくしに施錠のカギはきみにする
舷門の付近に立っていたきのう
きのうのことに香辛料をからませる
やわらかく噛んでは抽斗にもどす
きみのコトバが肉に響いているらしい
義務というくさり外れていまを居る
逢うたびに抑えきれずに灯される
風のひびきかきみのコトバか埠頭から
街はずれなにをさがしに入る路地
南アフリカ共和国からゆるくなる
取り扱い注意をつけておくわたし
わたくしのきのうは放置されている
あなたの影と自由行動
5月23日(金)
アガラス岬境にインド洋大西洋
喜望峰 着岸デッキ人だかり
ヴィクトリア・ワーフ・ショッピングセンター徒歩移動
怪しい眼にあってカバンを抱きよせる
手で押さえわたしの心にも施錠
やがてうしろへ消える民族楽器ライブ
ひびかせてたたく 細かく音を編む
帰船もうキャビンがわたくしの住処
日没も日の出もてのひらでうける
テーブルマウンテンを投函したくなる
細心の注意できみに踏まれている
自動翻訳AIに呑み込まれ
アフリカ大陸を右手に北上す
アパルトヘイト底に残っている歴史
形状は船か孤島かテーブルマウンテン
標高1086メートルうつくしきかたち
5月25日
逝ったひととの時間をすこし奪われる
集まって踊るとさみしさも解ける
老いだとしても彩りすこし添えている
影と歩ききみと歩いているデッキ
負の一面を波にうかべる
伝え伝わることがわたしを熱くする
すこし軽くあなたにはじかれるきのう
ともに生ききるうばい奪われ
ときどきはわたしの裏を盛っている
クルーズへ夜の重さを刻むペン
借り物かもしれぬ気分に引きずられ
ダチョウの卵もわたしも確保されてない
現在地につなぐ経路を忘れだす
迂回路かもしれぬあなたと道づれに
世界にひとつだけの自由を海のうえ
セッションですすめる わたくしの音楽
5月26日
ガザを見過ごしてならぬと横断幕
離岸近くきみと歩いているデッキ
背負わないことを波へもくり返す
寄港地にいささか置いてきたきのう
空いた時間でよいと預けてくれました
エックス線荷物検査のようにすべる船
混みあっているのか外される予約
帰船リミット越えるどう組んでみても
首にさげたIDカードたしかめる
荷物数かぞえてたしかめる 治安
シェアされたあなたへ着岸はできぬ
あざやかな声で波音ひびかせる
郵便ポストあるから見過ごしはできぬ
5月31日
いつの間に5月も末の海の日の出
モニターに日の出の船の舳(へさき)みえ
咳エチケットつながることにある不安
アルコール消毒きみを盛る食器
赤道通過イベントは午後7時から
赤い服でとわたくしを要とする
端午節のかざりは厄除けのかざり
装飾ひろばに中華の美女がよく似あう
異邦感 なににちなんだ端午節
信じられぬコロナ罹患へ隔離され
隔離室だろうとゆったりとフォーク
共用のトングときどき咳をする
海のひろさあつめて走るクルーズ船
自動翻訳まだ川柳は詠めぬらし
6月1日
隔離室でて窓からの海
どの波もあなたへつづくきのうへつづく
ふっくらと空を映して暗くなる
またきみのおもかげ談笑のあとに
川柳講座はむずかしいとの声に触れ
船底のふかさを思う 過去おもう
前にいるきみとの距離は近いのか
舳にも疲れの色が溜まりだす
ふるさとのみずうみでよい終の灰
生きてきた70年をまぼろしに
あこがれはあこがれのまま 旅に死す
みつめるとはなやぐひかり 光もまぼろし
たった一人の息子この世においてゆく
波のうえ いま船底は霊のまつり
海という牛に曳かれてゆくあの世
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