誰かをライバルであるととくに意識したことはない。そもそも闘争心に欠けている。
理解しあえる「(よき)ライバル」というのは、掛けがえのない存在だろう。《ライバルへ黙って置いてきた拍手》は、ライバルがいなかった私の「憧憬」かもしれない。
川柳も然り。私のほうからはとくに無かったが、何人かの方に「あなたがライバル」と言われたことはあり、複雑な気持だった。下記は番傘とらふす3月号「啄木鳥抄鑑賞」。《ライバル…》の句は、鑑賞文の初めに書かねばならない、鑑賞者の句。
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啄木鳥抄鑑賞 たむらあきこ
ひとすじの道を来たぞと負け惜しみ 山海
「ひとすじの道」とはどのような「道」なのか。想像できるのは、労多く報われることの少ない「道」。相手が裕福に余生を楽しんでいるのに、自分はそうではない。「負け惜しみ」の言葉の裏にいささかの自負がある。
伊豆の旅右に左に雪の富士 みゆき
伊豆半島を観光バスで回ってきたのだろうか。「右に左に」と富士山の位置を詠むことによって、旅の状況を浮かび上がらせている。
まあだまだ十年日記買って来る 和子
「まあだまだ」と、言葉に心意気を見せている。まだまだ生きますよ、と。「十年日記」は作者の健康への自信の表れ。
階段を一気に上がる嬉しい日 美羽
弾む気持が、「階段を一気に上がる」という若々しい動作に表れる。
歳をとらなければよいが誕生日 保州
これ以上「歳」はとりたくない、と思ったのは何歳頃だったか。「誕生日」はいやが上にも「歳」を突きつけてくる。自分の「歳」を思って唖然とする作者。
うろうろすると賞味期限が追ってくる 与至子
「賞味期限」が後ろから来るものだったとは。「賞味期限」に捕まると何を卒業せねばならないのだろうか。気を引き締めたからといって、いつかその時は来る。
探知機が鳴ってお鍋に睨まれる 定子
「探知機」は煙探知機。火に掛けたまま忘れていた鍋が、煮詰まって煙を出したようだ。慌ててガス栓を閉める。すっかり焦げた鍋が睨んででもいるかのようだ。
冬木立しっかりしろと僕にいう 愿
「冬木立」の凛とした佇まい。寒風に耐えている姿は、体力に不安の出てきた作者の弱気を叱咤激励しているようだ。
ダイヤモンドダストは宇宙からの愛 明子
ダイヤモンドダストは空気中の水分が凍ってできた氷の微粒子。冬空に煌めくダイヤモンドダストの美しさ。神様が下さった「愛」のかたちかと。
踏まれない位置でまーるくなっている スミ
もう世間の風当たりに耐えられる歳でもない。邪魔にならないように、「踏まれない」ようにと心掛けている。「まーるく」、これが自分を守るかたちであると。
嫁がせる様に水仙出荷する 祐子
大切に育てた「水仙」の「出荷」。傷が付かないよう、そっとセロファンの袋に入れる。あたかも娘を「嫁がせる」ときのように。
夢ひとつ叶い自分に拍手する みね
ささやかな「夢」ではあるが、努力によって叶ったのだ。「自分」に「拍手」をしたくなる、「自分」を褒めてやりたくなる、ちょっとした苦しい経過もあった。
実はから始まる話には乗らぬ 倫子
「実は」と持ち掛けられて良いことであった例がない。簡単に相談にくる人をまともに相手にしないことだ。
突風のように過ぎ行く朝・昼・晩 文代
年齢とともに時間が速くなる。ついには「突風」の速度になるというのが面白い。
転居して友ができたか便りなし 照代
引っ越していった友だちから連絡がない。あちらに「友」ができたのか、もう私のことはどうでもよくなったのかと。
電飾の光る滴を浴び聖夜 悦子
電飾(イルミネーション)の、闇に浮かび上がる美しさ、光の「滴」のように、作者を濡らしている。電飾は師走の風景になった。
復興へ日本の絆見せるとき 敏照
震災後の「復興」への努力を国中が忘れてはならない。
適当な返事ではなし終らせる 知香
「適当な返事」をしなければいつまでも続く「はなし」。そろそろ切らせていただく。
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「自分が進歩するためにこんなライバルだっている」
『前向きにとよく言うけれど、前に向いて歩くのが人間だよ、後ろ向きに歩くのは、ずっと難しいんじゃない』
これは、後ろ向きに歩きながら、新しいものを考えていた映画監督・黒澤明の言葉です。黒澤明のライバルは『映画』ー。「あなたの最高の作品は?」と聞くと「ネクスト・ワン」と答える人である。
結構面白い人だったんですね黒澤明。 ♪~( ̄ε ̄;)
りょーみさすけさま
句を闘っていると、ときどき頭が破裂しそうになります。
言葉を探していると、天国なのか、地獄なのか分からなくなってきます。(車内地獄)
後ろ向きにも、前向きにも歩きながら、あきこだけの「言語空間」まで辿りつけるかどうか。黒澤明とまで完璧には出来ずとも、「あきこの小宇宙」ぐらいまでは辿りつきたいと思っています。時間が…(汗)。