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 「(亡くなった)お母さんが草葉の陰で泣いてるよ」などという。「草葉」とは、文字通り草の葉のこと。「陰」は「物陰」よね。「草葉の陰」は、あの世を指す。つまり、「草葉の陰で泣いている」とは、あの世の人が泣いているということになる。かつては土葬だったことも関係しているのかも知れない。

 「草葉の陰」という表現は室町時代後半から見られるようだが、それより前には「草の陰」と書かれていて、変化があったのね。どちらにしても、むかしの人にとっていまよりずっとあの世とこの世は近い感覚だったのだろう。 

 ところで。久しぶりに、和歌一首。ちなみに上記は、母のこころ、母の愛。下記は、関係をもった女性への愛。
君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな 藤原義孝『後拾遺集』恋二・669

 あなたのためなら捨てても惜しくはないと思っていた命でさえ、(逢瀬を遂げたいまとなっては、あなたと逢うために)できるだけ長くありたいと思うようになった、という意味なのね。作者は、藤原義孝(ふじわらのよしたか、954~974)。「末の世にもさるべき人や出でおはしましがたからむ(のちまでもこのような人は現れないだろう)」と言われるほどの美男だったらしいが、痘瘡(とうそう、天然痘)にかかってわずか21歳の若さで亡くなってしまったのね。
 
 ほんものの愛は、和歌に詠んでも川柳に詠んでも、こころ打たれるものである。「一如(いちにょ)」ということばがある。一如は絶対的に同一である真実の姿という意味の仏教用語。平たく読めば「一つの如し」。もとは老荘思想の概念なのね。あの世にいても子のことを心配する母の愛や藤原義孝の恋のうたなどは、「愛命一如」と言ってもよいのではないか。その愛は、あたかも草に置く露のような美しさであり、儚さでもある。
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