「難解句鑑賞 №004」(川柳マガジン12月号から転載 執筆:たむらあきこ)
赤門にグリコ2粒落ちている 市井 美春
「赤門」は東京大学の門として知られる。「グリコ」はご存じ江崎グリコから発売されているオモチャ付きキャラメル。商品名は、成分として含まれているグリコーゲンに由来するらしい。キャッチコピーは「ひとつぶ300メートル」、すなわち一粒に300メートル走るのに必要なカロリーが含まれているという。また「グリコ」が東京大学の通称?である理由は、数学の入試問題にかつて〈じゃんけんグリコ〉が取り上げられたからだとか。
この句は、入学までに要する受験生の勉学に費やすエネルギーのことを言っているのだろう。
ベランダにギッシリ白塗りのカラス 相良 敬泉
思いつくのは映画『ローン・レンジャー』。ジョニー・デップが演じるのは、顔を白く塗った〝悪霊ハンター〟ことトント。物語は復讐に燃えるトントが、聖なる力によって瀕死の男ジョンを救うところから始まる。トントの腰まである長い髪の上には黒い「カラス」が乗っている。
この句には、「カラス(トント)」が「ギッシリ」、「ベランダ」という心理的に近い外界にいると、ある種倒錯の心理が詠まれている。「カラス」が内と外どちらを向いているかで鑑賞もまた異なるだろう。復讐が外に向くなら常識の範疇、内を向いているのであれば〈憎悪〉が自身に向けられているととれる。悪霊はひょっとすると自身の中に存在するのだろうか。
愛錆びて錆びてむらさきのど渇く 宮田 和
一読、ドメスティック・バイオレンスを詠んでいるのかと思った。虐待の被害にあった当事者たちが声をあげ続けている、年に一度のパレードがあるらしい。「暴力は愛じゃない」、そんなメッセージを伝えようとしているとか。仮装しているのは加害者から身を隠す必要があるから。多くは紫を身につけているが、その由来は女性に対する暴力根絶のシンボルである「パープルリボン」とか。
青と赤が混ざり多様な色合いが生みだされる紫。相反する色が共存しているためか、〈高貴〉と〈下品〉など二面性をもっている。紫から連想するネガティブイメージには、前述の暴力の関係する〈欲求不満〉や〈不安定〉がある。この句の「むらさき」はネガティブイメージ。「のど渇く」と、これもネガティブに呼応。
トルコ桔梗の青見せてから首しめる 石田 柊馬
「トルコ桔梗」の花言葉は〈優美〉など。花言葉本に取り上げられていないこともあるのは、アメリカ原産の比較的新しい花なので、ヨーロッパ起源の神話や伝承に出てこないためとか。大輪のフリル咲きはまるでバラのようだが、この句では小輪の一重咲きだろう。まるで少女の頭をのせているような花姿。
「首しめる」。性行為の際、縛ったり苦痛を与えたり、あるいは精神的な辱(はずかし)めによって性的興奮を得ることがあるらしい。サディズムだが、逆にそうした刺激を受け入れるマゾヒズムもある。性愛の喚起に暴力が必要なため、相手を負傷させたり、死に至らしめることもあるとか。この句は性倒錯の世界を詠んでいる。
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