※2月いっぱいで抄出を終えるため、急いでいます。「先生は、俳句とか短歌をもっとやりたかったんじゃないの?」との問いに、「そうなんや」と口惜しさをにじませたお返事。寿命には限りがあるので、あれもこれもというわけにはまいりません。三十代で毎日新聞の「毎日俳壇」や「毎日歌壇」で毎週のように特選をとられた鬼才。(毎日俳壇では年間特選数70回と記載された新聞(毎日俳壇賞受賞時)を見せていただきました) 輪廻転生が本当なら、もう一度生まれ変わって俳句も短歌も大御所と称えられるまで詠んでいただきたい。そんな思いで一昨年12月にインドに行き、舟の上からガンジス川に供養の花をながし、手向けたのです。
『前田咲二遺句集 平成7年』⓳
ほどほどを知り会心の絵が描けぬ
名匠の眼に毀したき壷ばかり
起承転結でくしゃみをする男
妻の光背が峠を越えた目に
よい結果 母の笑顔に書いてある
物忘れを自慢のように言うてはる
歴代の写真へ詫びることばかり
縄抜けの縄に尻尾が引っかかり
神のいたずらが老母を歩かせる
火を点けたタバコとがめる目に出合う
蹴つまずく背中を押したのは誰だ
見るとこはちゃんと見ている他人の目
夜を徹し遺体を探す投光器
タラップを降りる噂のサングラス
眼鏡を外したタモリの顔を知ってるか
縄電車 総裁選へ動き出し
うるさいな任天堂がピコピコと
ロボットと背伸びくらべはもうよそう
うちの化石が牛乳を飲んでいる
駈けながらシャツ脱ぎすてるVゴール
吊橋のまん中へんで泣けてくる
寝しずまってから母さんは泣くのだろ
この歳で女難の相があるという
錆びついた名がどうしても浮かばない
安倍文珠うら道を行く朝詣り
みかんがのっている母さんの置き手紙
夢はまさゆめそうら電話のベルが鳴る
原稿にない答弁もしてほしい
釣り宿の魚拓 額からはみ出そう
逆風が男の胸を厚くする
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