『前田咲二遺句集 平成12年』【14】
宇多田ヒカルの行進曲が春を呼ぶ
エンデバーにわたしの皺も写される
大根汁 雪に無口がよく似合う
女三人寄れば男を切り刻む
ライバルからの花輪は正面に飾る
花手桶 妻の知らない墓がある
波被りの難所を越えた櫓をゆるめ
受付にパントマイムを座らせる
たばことはこんなにうまい無人駅
口うつしの毒がそろそろ効くころだ
パレットに今日の疼きを溶いている
男ひとりの暮らし守宮に覗かれる
午前二時 妻が正座で待っている
手の届く範囲に眼鏡 辞書 湯呑
空席の知らせ楢山から届く
ポケットに答二つを持ち歩く
無茶なこと言うて好かれるお人柄
犬も男も行方不明になる広場
日本人よりもきれいなニッポン語
桜前線もうふるさとを過ぎたころ
気の早い茣蓙を桜に笑われる
こまごまと約束ごとのある別居
春を待つ鱗 美事に光らせて
膨らんだ夢がだんだん重くなる
コンパスくるりくるりと春を膨らます
かあさんの窓はいつでも起きている
忍の字をいっぱい抱いているシニア
平気です亡母が後ろにいてくれる
さくらひまわり堂々と咲く花が好き
風船を放てば春の空になる
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