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前田咲二遺句集 平成11年』⓫
添削の赤鉛筆にあるぬくみ
指人形の感謝は指を深く折り
恢復期 潮はゆっくり満ちている
選抜の子らにきらめく甲子園
六法をひもときこころ広くする
誰に貸したか失楽園が戻らない
ハードルを下げて流れに逆らわず
もう何も言うなこころが鈍るから
口で言うても目で叱っても直らない
友でなければああまで反対はしまい

甲子園 見下ろす雲の力瘤
薄塩をして自分史をしめくくる
忠君愛国とわたしの青春と
勤倹を説いて子供に笑われる
言い勝った方も疼いているだろう
どこまでが本気でどこまでが洒落か
男ひとり目刺しと酒があればいい
真剣な嘘 真剣に聞いてやる
ふかく頭を下げているのが本部長
見舞うたびどなたですかと老母が訊く

大擂鉢大すりこ木も永平寺
早く忘れたくて示談に判を押す
サングラスとればなんでもない男
一匹のみみずが這っている右脳
一匹は一匹 蟻も人間も
正論のアキレス腱を知っている
顔の四角い男 信用してしまう
隣よりアンテナ少し高くする
嫌いだな不意にカメラを向ける人
声を落として重い話になってくる

印刷したような言葉で迎えられ
くろもじで甘い言葉を切り刻む
コスモスと約束がある産寧坂
そろそろ歩く秋を追い越さないように
運のない男へ鳩が寄ってくる
土下座して済むものじゃない臨界事故
旅のノートに秋の瀬音を入れておく
上薬塗るていねいに一と息に
紙おむつ覗いてもう一度当てる
偶然にしては話がうますぎる

太陽も土も味方にして生きる
遺伝子組み換えてわたしも光ろうか
宇宙から交響楽が降ってくる
老父を送り老母を送って眠くなる
馬鹿になる本を一冊持っている
銀幕の女王は美しい死語だ
肉も血もないロボットに負けている
ひょっとこの仮面の裏が濡れている
定年後 鬼とも仏とも和む
無一物という眩しさもあるのです

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