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前田咲二遺句集 平成10年』❼
伸び切った輪ゴムの中に妻と居る
夫婦別姓 首輪が少し軽くなる
スランプの形で髭が伸びている
マツタケにもカニにもぼくは不感症
うどんのネギ多いと幸せと思う
外野席の主張を一つずつ拾う
鹿の脱糞 ぽとりと冬が静止する
鹿の瞳に静かな刻が流れている
名人の芸のかけらも見落とさず
火の匂う残り時間を抱いている

居ないと気にかかる居ったら肩が凝る
すぐ詫びる男を信じてはならぬ
遅い秋を男ひとりの膳にのせ
いじわるな男小銭を貯めている
モスクワ宣言眉に唾して読み返す
抓られた跡が絶えないクリントン
ソムリエの指やわらかく持つグラス
あの声で死ぬのを思いとどまった
絵馬に積っている神様のストレス
わたしの顔を塗りたくっている他人

居づらくなって線路を歩いている
耳の奥に忘れられない声がある
おもゆの湯気に咳きこみながら生きている
さよならの言葉 反芻しています
紀伊國屋にいっぱい置いてくる指紋
外見は少し繕うほどがいい
肩組んでサンタが歩く御堂筋
気心を許し外濠埋められる
たわいない噂が太い樹を倒す
合槌を打って負い目をまたふやす

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